元淵

元淵（げん えん）

元淵（485年 - 526年）は、北魏の皇族であり、広陽忠武王の称号を持つ人物です。字は智遠。

生涯

広陽懿烈王元嘉の子として生まれました。511年、父の死により広陽王の爵位を継承しました。孝明帝の時代には、肆州刺史に任じられ、北方民族からの信頼を得て反乱を鎮めるなどの功績を挙げました。その後、恒州刺史に転じましたが、その地で不正行為が多かったと伝えられています。

殿中尚書に任命されましたが、城陽王元徽の妃である于氏と私通したとして訴えられ、宗室の会議で罪を議決され、王の身分のまま私邸に蟄居させられることとなりました。

524年、沃野鎮で破六韓抜陵が反乱を起こすと、北道大都督として北伐に参加しました。李崇の指揮下に入り、反乱鎮圧に尽力。崔暹が白道で敗北すると、元淵は鎮を州に改めることを提案しましたが、当初は受け入れられませんでした。しかし、東西の勅勒が反乱を起こすと、朝廷は彼の案を再検討し、鎮を州に改めて人望回復を図ろうとしましたが、六鎮の反乱により施行には至りませんでした。

李崇召還後、元淵が北伐軍を総裁しました。525年、破六韓抜陵が柔然を避けて南下すると、元淵は別将の李叔仁を救援し、20万人もの人々を降伏させました。元纂とともに降伏民を安置するための郡県設置を提案しましたが、受け入れられず、降伏民は冀州・定州・瀛州に分散配置されることになりました。この措置が新たな反乱を招き、鮮于修礼や杜洛周らが反乱を起こし、降伏民も再び反乱に加担する事態となりました。

帰還を求める上書を提出し、楊津と交代して侍中・右衛将軍・定州刺史となりました。趙叔隆らが反乱軍に敗れると、元淵は趙叔隆に防衛を命じましたが、劉審から権限濫用を報告されてしまいます。元徽との不仲も重なり、洛陽に召還され吏部尚書兼中領軍となります。孝明帝は二人の関係修復を試みましたが、元徽の憎悪は根強く残りました。

526年、河間王元琛らが鮮于修礼に敗れると、元淵は大都督に任じられ、元融と裴衍が配属されました。元徽が霊太后に元淵の兵権掌握を警戒するよう進言したため、元融らは元淵を警戒するよう命じられました。元淵は勅命に従い、自らの判断を避けるようになりました。

兵の士気が低く、逃亡が相次ぐ中、元淵は陣営を連ねてゆっくりと進軍しました。交津に到達し、川を隔てて布陣すると、かつて元淵の統軍であった毛普賢を説得し、降伏の意志を示させました。さらに元晏を派遣して反乱軍の程殺鬼を説得し、内部の疑心暗鬼を誘いました。しかし、葛栄が毛普賢と鮮于修礼を殺害し、自ら首領となると、人心掌握のため北方の瀛州へ移動しようとしました。元淵は葛栄を追撃しましたが、葛栄は元融を破り、戦死させました。元淵は定州へ退却しましたが、楊津に疑われ、仏寺に留め置かれます。毛諡の讒言により、楊津は元淵を襲撃させ、元淵は博陵郡へ逃れる途中で反乱軍に遭遇し、葛栄の前に引き出されました。葛栄は元淵を殺害し、その生涯を閉じました。

孝荘帝の時代に王爵を追復され、司徒公の位を追贈されました。諡は忠武。

子女

元湛
元瑾（尚書祠部郎、高澄の殺害を計画して処刑）

伝記資料

『魏書』巻18 列伝第6
『北史』巻16 列伝第4
* 魏故使持節侍中驃騎大将軍儀同三司礼部尚書兼尚書僕射東北道行台前軍広陽王墓誌銘（元淵墓誌）

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