元狩

元狩（げんしゅ）は、中国の前漢時代、武帝によって用いられた元号の一つであり、紀元前122年から紀元前117年までの6年間を指します。武帝の治世において、元狩は4番目の元号にあたります。

当初、この期間は単に「元年」「二年」…と数えられていましたが、後になって各年代に名称を付与する建議が出され、過去に遡ってこの時代が「元狩」と名付けられました。この名称は、一角獣、すなわち白い麒麟（白麟）を捕獲したという慶事に基づいています。

元狩の時代には、前漢王朝にとって重要な出来事が数多く発生しました。

元年（紀元前122年）: 淮南王の劉安と衡山王の劉賜が自殺するという事件が起こりました。これは、中央政府に対する地方勢力の反乱未遂事件に関連するものと考えられています。
2年（紀元前121年）: 霍去病による匈奴遠征が行われ、河西回廊が漢の勢力範囲に組み込まれました。この遠征は、長年漢王朝を苦しめてきた匈奴に対する攻勢を強める上で、重要な転換点となりました。
4年（紀元前119年）: 衛青と霍去病が再び匈奴遠征を指揮し、これにより匈奴は漠北の地へと撤退を余儀なくされました。これにより、漢王朝の北方における安全が確保されるとともに、中央アジアへの影響力を拡大する足がかりとなりました。また、この年には、塩と鉄の専売制度が開始されました。これは、国家財政を強化するための重要な政策であり、後の時代にも大きな影響を与えました。
5年（紀元前118年）: 半両銭が廃止され、新たに五銖銭が導入されました。これは、貨幣制度の改革であり、経済の安定化と円滑化を目的としたものでした。
* 6年（紀元前117年）: 霍去病と司馬相如という、漢王朝にとって重要な人物が相次いで亡くなりました。霍去病は匈奴遠征で多大な功績を挙げた名将であり、司馬相如は優れた文才で武帝に仕えた文人でした。彼らの死は、漢王朝にとって大きな損失でした。

元狩の時代は、武帝の治世における重要な時期であり、政治、軍事、経済の各方面において、その後の漢王朝の発展に大きな影響を与えました。積極的な対外遠征による領土拡大、塩鉄専売などの経済政策、貨幣制度の改革など、様々な政策が実施され、漢王朝の基礎が固められた時代と言えるでしょう。

もう一度検索