先進的物流施設

先進的物流施設とは

先進的物流施設（Advanced Logistics Centre, ALC または Advanced Logistics Facilitys, ALF）とは、高度な機能を有する物流不動産、すなわち物流倉庫を指します。海外では、無人搬送車などの自動化技術を導入した施設を「スマートロジスティクスセンター」や「スマートロジスティクスパーク」と呼ぶこともあります。

明確な定義は存在しないものの、物流不動産業界では一般的に、延床面積が16,500㎡以上、床荷重1.5t/㎡以上、有効天井高5.5m以上、柱間隔10m以上のスペックを備えた大規模施設を指すことが多いです。さらに、高速道路や幹線道路、空港や港といった交通の要所に隣接し、大型トラックが最上階までアクセス可能な構造、従業員の快適性を重視したオフィス、コンビニエンスストア、休憩スペースなどの設置、環境への配慮、耐震・免震性能、非常用発電機の設置などの機能も求められます。日本では、プロロジスが開発してきた仕様が業界の標準となっています。

先進的物流施設の開発は、プロロジス、日本GLP、大和ハウスといった大手物流不動産プロバイダーが主導しており、これら3社は「物流不動産の御三家」とも呼ばれています。また、プロロジスが提唱する「Aクラス物流施設」や、CBREが提唱するマルチテナント型先進的物流施設「大型マルチテナント型物流施設（LMT）」といった類似の用語も存在します。

需要の高まりと市場動向

サード・パーティー・ロジスティクス（3PL）のアウトソーシング需要や、電子商取引（eコマース）市場の急速な拡大を背景に、先進的物流施設の需要は増加の一途を辿っています。投資用不動産としての人気も高く、外資系企業や大手デベロッパーが開発を推進しており、J-REITや私募リートなどの不動産ファンドも積極的に投資を行っています。

業界最大手であるプロロジスのデータによると、ALCの供給不足率は、アメリカで30%、欧州で15%、日本で3%となっており、特に日本では今後の拡大が見込まれています。Eコマース企業は、在庫の回転率が高く、取り扱い点数が多いため、実店舗を持つ企業よりも3倍の床面積が必要になるとも言われています。

多様な用途と課題

先進的物流施設は、広大な床面積を活かし、倉庫としての利用だけでなく、運輸会社の営業所、データセンター、撮影スタジオ、コールセンターなど、多岐にわたる用途に活用されています。また、生産から管理、配送までを一元的に管理できるため、工場機能を組み込んだハイブリッド型の施設も登場していますが、用途変更や消防法への対応が今後の課題となっています。

防災拠点としての役割

先進的物流施設は、大規模で堅牢な構造、免震構造、大型スロープを備えているため、地震や台風などの災害に強く、津波などの非常時にも車両がアクセスしやすいという特徴があります。また、非常用発電機や太陽光発電パネル、地下水浄化システム、衛星電話などを備えているため、事業継続計画（BCP）の観点からも重要な役割を担います。これらの特性から、災害時には大型避難施設として、各避難所へのラストワンマイル拠点として自治体と協定を結ぶ動きも広がっています。

物流不動産市場の主要プレーヤー

2010年時点において、日本GLPとプロロジスは日本の物流不動産市場の床面積の51％を供給していました。その後、三井不動産や大和ハウス工業などの大手デベロッパーも市場に参入し、シェアを拡大しています。

先進的物流施設の主なブランド

先進的物流施設という用語は、プロロジス、GLP、三井不動産、住友商事などによって使用されており、各社が独自のブランド名で展開しています。

日本の物流REIT

日本ロジスティクスファンド投資法人、GLP投資法人、日本プロロジスリート投資法人、三井不動産ロジスティクスパーク投資法人など、多くの物流REITが市場で活動しています。

出典

EC（電子商取引）拡大により模索が続く米国や日本の小売り・物流企業 - 独立行政法人日本貿易振興機構
次世代型物流施設の動向（PDF） - 三井住友銀行
物流拠点機能強化支援事業（PDF） - 国土交通省

関連項目

倉庫
自動倉庫
フルフィルメントハウス
物流
日本危険物倉庫協会
サプライチェーン・マネジメント
物流テック
IoT
デジタルトランスフォーメーション（DX）
無人搬送車
Robot as a Service（RaaS）
プラスオートメーション
工業団地
交通結節点
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