光子の窓

花椿ショウ 光子の窓

昭和のテレビ放送草創期にあたる1958年から約2年半にわたり、日本テレビ系列で毎週日曜夜に放送されたのが、音楽バラエティ番組『花椿ショウ 光子の窓』です。当時24歳だった女優の草笛光子がホストを務める冠番組であり、化粧品メーカーの資生堂が一社提供を務めたことでも知られています。

この番組は、日本テレビと東宝テレビ部の共同製作により、1958年5月11日から1960年12月25日まで、全138回にわたって届けられました。番組名の「花椿」は、スポンサーである資生堂のシンボルマークに由来しています。草笛光子をメインに、歌やコントといった要素を盛り込んだ本格的なバラエティショーとして、視聴者を楽しませました。

特筆すべきは、番組終了間近にカラー放送が行われたことです。1960年10月30日放送の第130回は、昭和35年度（第15回）芸術祭参加の特別番組「イグアノドンの卵」として放送され、通常の30分枠から15分延長された45分枠で制作されました。この回はテカラーVTR（当時導入されたばかりのカラーVTR）を使用して制作され、その色彩効果の芸術性が高く評価され、同年度の芸術祭奨励賞を受賞しています。また、最終回にあたる同年12月25日の放送「光子の大パーティー」も、特別にカラーで制作・放送されました。

しかし、残念ながら、当時のテレビ番組の多くと同様に、この『光子の窓』の映像はほとんど現存していません。番組開始当初はVTRが存在せず生放送でしたが、放送期間中にモノクロVTRやカラーVTRが導入され、一部の回は収録されるようになりました。しかし、1970年代頃まで使用されていた2インチVTRの機器やテープは非常に高価で、特にテープは60分で100万円もの価格だったため、コスト削減のために収録された映像は原則として消去されるのが一般的でした。著作権の問題なども、保存を難しくしていた要因とされています。

そのため、現在視聴可能な映像は、前述の「イグアノドンの卵」と、同じく1960年に放送された「杜子春」のわずか2本のみです。これらの映像も、オリジナルのVTRではなく、キネコと呼ばれる手法でフィルムに録画されたモノクロ版として残されています。これらの貴重な記録は、2003年に刊行された日本テレビの社史『テレビ夢50年』に付属するDVDに収録されており、「イグアノドンの卵」については放送ライブラリーでも閲覧が可能です。

番組には、メインの草笛光子をはじめ、

小島正雄
三國一朗
西村晃
大平透
徳川夢声
トニー谷
旗照夫
柳沢真一
伊藤素道とリリオ･リズム･エアーズ

といった多彩な出演者が登場しました。また、製作には三木鮎郎、永六輔といった著名な放送作家が構成を担当し、音楽は広瀬健次郎（演奏は原信夫とシャープス･アンド･フラッツ）、演出は井原高忠が手がけるなど、当時の第一線で活躍するスタッフが集結しました。

番組のオープニングを飾ったテーマソング「光子の窓、オープニングテーマ」は、作詞：岡田教和、作曲：広瀬健次郎、歌：草笛光子によって制作され、当時の多くの視聴者に親しまれました。

日本テレビをキー局に、番組は以下の放送局でもネットされました。

北海道放送 → 札幌テレビ
西日本放送
読売テレビ
テレビ西日本
東海テレビ
* 南海放送

『花椿ショウ 光子の窓』は、日本のテレビが確立されていく過程で生まれた重要な番組であり、作家の小林信彦氏がその著書『テレビの黄金時代』で「イグアノドンの卵」について触れていることや、番組内の資生堂製品インフォマーシャルが後の番組『オシャレ30・30』にリメイクされたこと、さらに日本テレビの周年記念特番やバラエティ番組で複数回にわたり再現企画が行われるなど、後世にもその存在が記憶されています。現存する映像は少ないものの、日本のエンターテインメント史における貴重な一ページを飾る番組と言えるでしょう。

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