光崎検校

光崎検校の生涯と音楽的業績

光崎検校（みつざき けんぎょう）は、19世紀前半に京都で音楽家として活躍した盲目のアーティストである。生年は不明だが、彼の才能はその時代においても際立っていた。文政4年（1821年）に故障となり、都名を浪の一（なみのいち）から富機一へと改名した。彼は、地歌三味線を一山検校に、箏曲を八重崎検校に師事し、高度な技術を身につけていった。

この時代、すでに地歌三味線の作曲や演奏技法は先人たちによって完璧に近い形で築かれていたが、光崎はその中で独自の音楽性を追求し始める。特に、江戸時代初期の三味線組歌や箏組歌、段物を研究し、これらを自身の作品に取り入れることで新たな風を吹き込んだ。特に、彼は三味線と箏の両方で自作曲を演奏し、一曲の中で両方のパートを創作した初の音楽家としての評価を得ている。

光崎が注目したのは、箏音楽の再発見であった。彼は、当時三味線が主流であった中、箏の音楽に再び光を当て、新たな作品を生み出すことで、邦楽全体の方向性を変える影響を与えた。彼の作品は精緻で理知的でありながら、気品と風格を備え、高度な技術が要求されるものであった。

彼の楽曲の中には、『五段砧』という非常に複雑な箏の高低二重奏曲や、『秋風の曲』といった作品があり、後者は白居易の詩「長恨歌」にインスパイアされ、江戸初期の楽曲形式で作成された。光崎はこの曲のために新しい箏の調弦法「秋風調子」を考案したという。このように光崎は、伝統を踏まえつつも革新を追い求める姿勢が多くの音楽家に影響を与えた。

彼の芸術活動を評価した越前国の代官、蒔田雁門が光崎のパトロンとなり、作曲や楽譜の出版をサポートした。特に、彼は『絃曲大榛抄』という精密な三味線楽譜集や、自作の『秋風の曲』に関する楽譜「箏曲秘譜」を出版したが、戦前には光崎自身による校閲版も存在していた。しかし、それらの譜本の多くは戦災によって失われてしまった。

また、光崎の音楽的活動は当道座内で反感を招くことがあり、結果として彼は京都を追われたとも言われている。彼は、当時の音楽作品に新しい視点を加えるべく、三味線と合奏が可能な箏組歌の『菜蕗（ふき）』に、『夕辺の雲（ゆうべのくも）』という新しい曲を作曲したことでも知られている。

光崎の弟子の中には、備後国の葛原勾当があり、彼は八重崎検校の弟子でもあった。光崎の教えは、中国系地歌箏曲の発展に寄与することとなる。

光崎検校は、1853年頃に没した。彼の残した音楽は、後の邦楽の発展に大きな影響を及ぼし、今なお多くの音楽家たちによって受け継がれている。

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