光徳寺 (長野県南木曽町)

光徳寺の歴史

光徳寺は、長野県木曽郡南木曽町の妻籠宿に位置する臨済宗妙心寺派の寺院です。山号を瑠璃山と称し、中部四十九薬師霊場第二十一番、木曾西国三十三観音霊場二十八番、木曽七福神霊場（恵比寿）として、多くの人々に信仰されてきました。

寺の開基は、明応9年(1500年)に悟渓宗頓によって始まったと伝えられています。しかし、悟渓宗頓は同年に妙心寺の住持として遷化しており、この伝承は確証に欠けます。寺伝によれば、天正11年(1583年)に伊那郡の開善寺の性天宗廣が、薬師堂を建てて薬師如来を安置し、隠居寺としたのが始まりとされています。その後、山村道勇が中興開基として寺の再興に尽力しました。

光徳寺に関する最も古い記録は、慶長4年(1599年)の「瑠璃山光徳禅寺　本尊薬師瑠璃光如来奉刻彫勧進帳」です。この記録には、本尊の薬師瑠璃光如来像が木山によって作られたこと、そして当寺の初代住職が性天宗廣であることが記されています。また、延宝6年(1678年)の『木曾中寺院改帳』には、光徳寺が山城国妙心寺の末寺であり、寺の境内や普賢堂、庚申堂の存在が記録されています。

庫裡は天和2年(1682年)に建てられたと伝えられていますが、現在の建物が当時のものかどうかは定かではありません。貞享3年(1686年)の『妻籠宿覚書』には、光徳寺の規模が具体的に記されており、方丈、衣座、廊下、庫裡、庚申堂、衆寮などが存在していたことがわかります。享保3年(1718年)の『妻籠宿覚書』にも同様の記述があり、当時の光徳寺の様子を窺い知ることができます。

本堂は、享保10年(1725年)に脇本陣の林恵海居士によって再建されました。本堂に掲げられた扁額は、山岡鉄舟の揮毫によるものです。方丈は、享保11年(1726年)に村内からの寄付によって改築され、現在の姿になりました。かつて境内には「祇園桜」と呼ばれる枝垂桜がありましたが、枯れてしまったため、平成16年(2004年)に伐採されました。

十二世住職の中外は、石工の技術に長けており、文化10年(1813年)に蘭川の河原で見つけた「延命岩」を現在地まで運び上げ、蓮華台を刻んで安置しました。十五世住職の遂應は、美濃国稲葉郡の出身で、嘉永2年(1849年)に光徳寺の法統を継ぎました。彼は優れた土木技術を持ち、明治時代には細の山を開拓したり、舟ヶ島から渡島に至る「大明神井水」を開通させるなど、地域の発展に貢献しました。また、明治初頭の廃仏毀釈の動きから、寺院を救ったという逸話も残っています。明治天皇の東下りの際には、行在所として使用され、その栄誉に浴しました。明治4年(1871年)に描かれた境内図には、外塀、如是庵、観音堂が描かれていますが、観音堂は荒廃し、観音像は本堂に移されています。

光徳寺の本尊は秘仏であり、創建以来一度も開扉されたことがありません。また、眷属の十二神将は、干支を台座に彫るという珍しい形式をしています。これらの仏像を拝観することはできませんが、脇壇には西国三十三観音像が奉安されています。境内には、多くの身代わり地蔵尊が並べられており、人々の信仰を集めています。

光徳寺の寺宝

光徳寺には、人力車の祖型とされる「車付駕籠」が残されています。これは、十五世住職の遂應が発明したものです。また、寛文13年(1673年)から延宝7年(1679年)にかけて書写された600巻に及ぶ大般若経や、南木曽町指定文化財である「本尊薬師瑠璃光如来奉刻彫勧進帳」も所蔵しています。

光徳寺へのアクセス

JR東海中央本線南木曽駅より徒歩約40分です。

参考資料

『南木曽町誌』 南木曽町誌編さん委員会 1982年
『寺と神社 (信州の文化シリーズ)』 信濃毎日新聞社 1981年
『探訪・信州の古寺 第Ⅲ巻 <禅宗>』 郷土出版社 1996年
『中部四十九薬師巡礼』 中部四十九薬師霊場会 朱鷺書房 1999年

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