全日本新空手道連盟

NPO法人全日本新空手道連盟

概要

「新空手」または「グローブ空手」として広く知られるNPO法人全日本新空手道連盟は、ボクシンググローブを装着して行う直接打撃制の空手団体です。その競技形式は、突き技と蹴り技を中心に展開される攻防を特徴としています。

この団体では、参加者の経験やレベルに合わせてK-2、K-3、K-4という三つのクラスを設けて試合を実施しています。試合形式は主に勝ち抜き方式のトーナメントですが、延長戦を設けず一度の対戦で勝敗を決するワンマッチ形式も選択可能です。競技の模様は、スポーツ専門チャンネルGAORAの番組「格闘KING」で定期的に放送されています。

主要な大会として、東京・綾瀬の東京武道館で通常開催される隔月ごとの「交流大会」があります。そして、年に一度、5月には全日本選手権大会（通称Grand Prix）が開催され、団体の頂点を決める舞台となっています。近年は活動範囲を拡大し、関西地方でも普及が進んでおり、大阪や京都を中心に西日本大会も定期的に開催されています。

スローガンと理念

全日本新空手道連盟が掲げるスローガンは「一歩前に出る勇気」と「いじめ、しない、されない、許さない」です。これらの言葉には、「精神的な成長は、才能や力を持つ強者よりも、困難な状況にある弱者の立場にいる人々にとってこそ最も必要である」という団体の根幹にある考え方が反映されています。新空手の理念や設立経緯、現在のルール体系など、詳細については、2010年5月3日に行われた第21回全日本選手権大会のパンフレットに掲載された「神村榮一新空手代表に聞く、最強の空手の夢は、夢で終わらせない」というインタビュー記事に詳しくまとめられており、これは新空手の公式サイトでも読むことができます。

ルールと特色

ルールの特色

新空手の大きな特色の一つに「腰上8本ルール」と呼ばれる独自の規則があります。これは、試合時間中に相手の胴体（帯より上）に対して、最低でも8回以上の蹴り技を繰り出すことを義務付けるものです。もし規定回数に満たない場合、判定時に減点の対象となります。このルールは、顔面への攻撃が許容されているためどうしてもパンチ主体になりがちな競技特性を考慮し、空手の重要な要素である「蹴り技」の技術を維持・向上させることを目的として導入されています。

また、全日本選手権大会には、各クラスで通常ルールとは異なる特別な規定が設けられています。

クラス別ルール

K-2：
最も競技レベルの高いクラスで、連盟公認のグローブ、マウスピース、ファウルカップ、そして任意でレガース（脛当て）を装着します。顔面への直接打撃が認められており、試合時間は本戦2分です。延長戦は1回2分まで実施され、トーナメントの準決勝までは体重による判定も考慮されますが、決勝戦では最大2回の延長が行われます。このクラスへの参加資格には制限があり、プロの試合経験が1戦以上ある選手は原則として出場できません。ただし、通算戦績が5戦以下で、かつ2年以上試合から離れている選手は参加が許可される場合があります。

K-3：
主に空手初心者向けに設定されたクラスです。K-2で使用する防具に加え、ヘッドギアと胴プロテクターの着用が義務付けられています。試合時間はK-2より短い1分30秒とされ、腰上への蹴り技の義務本数も6本以上とやや緩和されています。新空手に初めて挑戦する選手の多くがまずK-3で経験を積み、その後K-2クラスを目指す傾向にあります。比較的参加しやすいため、新空手道連盟に所属する道場だけでなく、他の同好会やサークル、個人からの参加者も多く、幅広い層の選手が集まります。また、女子部門や中学生部門、高校生部門など、年齢や性別に応じた部門も設けられています。

K-4：
このクラスは主に小学生を対象としています。K-3と同じ装備を着用しますが、手技による顔面への直接攻撃は禁止されています。顔面攻撃を禁じているのは、まだ身体の発達が十分でない参加者が多いことや、学年別・体重別で分けられていてもなお選手の体格や技術レベルに差があることを考慮した措置です。腰上への蹴り技の義務本数はK-2と同じく8本とされており、試合時間はK-3と同様の1分30秒です。近年、参加者が急増しており、注目を集めているクラスです。

全日本選手権での特別ルールとして、K-2GPでは本戦が3分となり、延長戦は2分で2回まで実施され、2回目の延長では必ずどちらかに勝敗がつくマストシステムが採用されます。レガースの着用は選手の任意となります。K-3GPでは胴プロテクターの着用義務がなくなり、K-4では女子選手に限り胴プロテクターの着用が自由選択となります。

試合スタイルと歴史

新空手の試合スタイルは、参加する団体や選手の背景によって多様です。多くの選手はキックボクシングのスタイルをベースとしていますが、近年ではフルコンタクト空手、伝統派空手、テコンドーなど、他の様々な武道や格闘技をバックグラウンドに持つ選手も多数参加しています。

競技スタイルが近しいことから、キックボクシングやK-1といったプロ格闘技との関連性が深く語られることがよくあります。実際、新空手で優れた実績を残した選手の多くが、キックボクシングやK-1などのプロの舞台で活躍しています。全日本選手権の重量級優勝者がK-1に挑戦するなど、「プロへの登竜門」として位置づけられる側面を持っています。こうしたプロ格闘技界との関係は、新空手道連盟の設立当初に加盟していた道場のほとんどがキックボクシングジムであったことに由来します。設立当初のスローガンが「プロを越えるアマチュアを！」であったことからも、積極的に選手をプロの世界へ送り出そうという強い意向がうかがえ、ある程度プロの下部組織的な意味合いを持っていました。

しかし、近年はその方針に変化が見られます。よりアマチュア競技人口の普及に力を注ぐようになり、初心者向けのK-3や小学生対象のK-4といったクラスを新たに開設しました。これにより、必ずしもプロを目指すのではなく、「自分自身への挑戦の場」を提供することに重点を置く方向へとシフトしています。2007年度の全日本選手権大会において、それまで認めていたプロ選手の参加を禁止としたことも、アマチュア大会としての性格をより明確にする姿勢を示したものと言えるでしょう。とはいえ、前述の「K-1甲子園」への予選協力を含め、新空手を経てプロとしてデビューする道を積極的に支援していると同時に、K-4小学生の部などを推進している現状からは、プロを目指す選手とアマチュアとして競技を楽しむ選手、双方を受け入れられるシステムを目指していることがうかがえます。

主な出身選手

大前力也
城戸康裕
高萩勉
武田幸三
那須川天心
ニコラス・ペタス
新田明臣
野田貢
安廣一哉
山本優弥