八幡の戦い

八幡の戦い:正平一統崩壊の端緒となった激戦



南北朝時代、観応の擾乱という内乱の余波が収まらない中、正平7年/文和元年(1352年)2月から5月にかけて、山城国京都の男山八幡宮(現在の京都八幡市石清水八幡宮)において、後村上天皇率いる南朝軍と、足利義詮率いる北朝軍による大規模な合戦が勃発しました。この戦いは、男山の戦い、あるいは男山八幡の戦いとも呼ばれています。

戦いの背景:観応の擾乱と正平一統



観応の擾乱は、足利尊氏足利直義の対立から始まりました。直義派による高師直高師泰兄弟の暗殺後も両者の対立は続き、直義は京都を脱出して鎌倉へ逃れました。尊氏は直義討伐を優先するため、南朝と和睦し、後村上天皇から直義・直冬追討令を得ます。この結果、北朝の崇光天皇は廃され、年号は南朝の「正平」に統一されました(正平一統)。

しかし、正平7年2月、鎌倉で直義が急死すると、北畠親房は正平一統を破棄。尊氏の征夷大将軍の地位を剥奪し、京都と鎌倉の同時奪還を目指して挙兵しました。この動きに呼応し、南朝は足利義詮への攻撃を開始します。

戦いの経過:南朝の京都奪還と北朝の反撃



閏2月20日、南朝方の楠木正儀、北畠顕能らは、足利尊氏不在の京都で北朝軍を攻撃。この奇襲により北朝軍は苦戦を強いられ、七条大宮の戦いで細川頼春戦死、義詮は近江へ逃れました。南朝は、南北朝分裂後初めて京都を奪還、光厳上皇、光明上皇、崇光上皇、直仁親王ら北朝皇族を捕らえました。後村上天皇は、行宮を男山八幡宮に移しました。

一方、関東では新田義貞の遺児、新田義興・新田義宗らが宗良親王と共に挙兵し、一時的に京都と鎌倉が南朝の支配下に置かれました。しかし、近江へ逃れた義詮は各地の守護の協力を得て勢力回復を図り、3月15日には京都を奪還。そして、後村上天皇の仮御所である男山八幡宮を包囲しました。

北朝軍は男山八幡宮を包囲し、兵糧攻めを行いました。約2ヶ月に及ぶ包囲戦の中で、南朝方からは北朝へ寝返る者も現れました。5月11日、後村上天皇は側近と共に包囲網を突破して脱出、男山八幡宮は陥落しました。この際に、四条隆資、一条内嗣、滋野井実勝ら公卿が戦死しました。

戦いの影響:正平一統の崩壊と南北朝合戦の長期化



八幡の戦いにより、正平一統は崩壊しました。南朝は一時的に京都と鎌倉を制圧しましたが、足利義詮の反撃によって北朝が優位に立ちました。しかし、北朝の三上皇と皇太子は捕らわれ、三種の神器も南朝に接収されたため、足利幕府の法的根拠は大きく揺らぎました。北朝は8月17日、神器なしで後光厳天皇を即位させ、尊氏も将軍に復帰しましたが、尊氏の南朝への降伏という前歴があったため、幕府と北朝の権威は大きく傷つきました。この戦いは、南北朝合戦の長期化に繋がる大きな転換点となりました。

八幡の戦いに参加した主な人物



南朝: 後村上天皇北畠親房、楠木正儀、北畠顕能、千種顕経、四条隆資

北朝・足利軍: 足利義詮佐々木道誉土岐頼康細川顕氏細川頼春、細川頼之、細川頼有、斯波高経、山名師義、赤松光範

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