八木新宮特急バス

八木新宮特急バス：紀伊山地を縦断する長距離バスの旅

八木新宮特急バスは、奈良交通が運行する大和八木駅（奈良県橿原市）と新宮駅（和歌山県新宮市）を結ぶ路線バスです。この路線は、高速道路を使わない路線バスとしては日本最長の169.8kmを走り、168もの停留所があります。1日3往復運行され、その所要時間は約6時間半にも及びます。

路線概要

大和八木駅を起点とし、国道168号を経由して紀伊山地を南下、奈良県と和歌山県の県境を越え新宮駅へと至ります。通過する市町村は、奈良県内の橿原市、大和高田市、葛城市、御所市、五條市、吉野郡十津川村、そして和歌山県内の田辺市と新宮市と、8つの市町にまたがります。

全線走破には約6時間半を要し、その間、五條バスセンター、上野地（谷瀬吊り橋）、十津川温泉の3箇所で10分から20分程度の休憩が設けられます。ただし、乗務員の交代はなく、全区間を1人の運転士が担当します。

途中下車が可能な企画券も販売されており、沿線の観光地を巡ることもできます。かつては川上村を経由する路線もありましたが、現在は旧道を通るルートがほとんどです。

運行の歴史

この路線は、もともと1963年に「大仏新宮線」として奈良大仏前と新宮駅間を結んでいました。当時は187.2kmの距離を誇り、「はやたま」「やまとじ」の愛称が付けられていました。1983年に大和八木駅発着に変更され、現在の「八木新宮線」となりました。

2009年には一部区間で新道経由に経路変更が行われ、停留所の廃止もありました。2010年にはホテル昴経由の路線も開設されましたが、一部便は経由しません。2017年には外国人観光客の誤乗防止のため、系統番号が付与されました。

2022年からは土日祝ダイヤの一部便に「やまかぜ」という愛称が付き、一部経路の変更により所要時間が約35分短縮されました。そして、2023年には奈良交通創立80周年と大仏新宮線運行開始60周年を記念して、期間限定で大仏新宮線を復刻運行しました。

特徴的な運行

かつては特急運転も行っていましたが、現在は一部区間で数か所のバス停を通過する程度です。しかし、請川 - 新宮駅間では、並行する熊野御坊南海バスの路線よりも停車するバス停が少ないため、実質的には特急としての役割も果たしています。

運賃表示器は、以前は幕式を使用していましたが、現在はLCD式に更新され、観光案内なども表示されるようになりました。表示される整理券番号が多いため、運賃表示は複数ページに分かれています。

地元住民の生活路線であると同時に観光路線としての側面も持ち、外国人観光客も利用します。車内では、沿線の観光地を音声合成で案内しており、運転手の裁量で案内を受けられる場合もあります。

沿線の魅力

沿線には、世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」の登録資産や、数多くの温泉地が点在しています。天辻峠、猿谷ダム、十津川温泉、湯の峰温泉、新宮高校付近などの観光スポットがあり、温泉巡りを楽しむこともできます。

使用車両

現在の主な使用車両は、日野・ブルーリボンと、いすゞ・エルガのノンステップバスです。これらの車両は、沿線市町村のキャラクターや観光地のラッピングが施され、2人掛け主体のハイバックシートを採用しています。また、多客時にはツーステップ車が使用されることもあります。

1992年から使用されていた旧型車は2017年に引退し、現在は使用されていません。

主な停留所

大和八木駅、高田市駅、五條バスセンター、五条駅、星のくに、大塔支所、上野地（谷瀬の吊り橋）、十津川村役場、十津川温泉、ホテル昴、本宮大社前、湯の峰温泉、川湯温泉、新宮駅などがあります。

八木新宮特急バスは、紀伊山地の豊かな自然と歴史に触れることができる、魅力的な長距離路線バスです。地元の方々の日々の足として、また観光客の方々には、特別な旅の体験を届けています。

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