八股文

八股文（はっこぶん）とは

八股文（はっこぶん）とは、中国の明・清時代に行われた科挙において、受験生に用いられた特殊な文体のことを指します。別名として、四書文、八比文、時文、時芸、制芸、制義などがあります。

歴史

明以前

科挙が官僚選定の中心となったのは宋代です。唐代の科挙は貴族制を補完するもので、詩賦が重視されていました。しかし、宋代になると詩賦は廃止され、五経を中心とした儒学の知識と文章能力が問われるようになりました。このため、受験生は家庭教師を雇い、長期間の教育を受ける必要がありましたが、これは富裕層に限られた機会でした。

明

明の洪武帝は、劉基とともに科挙の試験内容を朱子の四書解釈に重点を置くように改めました。これは、洪武帝自身が朱子学を重視していたためです。明代の受験生は、八股文という形式で答案を作成することが求められました。八股文は、一定の対句作成能力があれば対応可能であり、比較的平易な形式であったとされます。これは、全国各地から広く人材を集めることを目的としたものでした。しかし、八股文は形式重視の傾向があり、小手先の器用な人材は採用できても、真に優れた人材を得られないという問題点もありました。

清

清朝も明代の八股文を踏襲しました。八股文は1902年に清朝政府によって科挙での使用が禁止されるまで存続しました。その後、1904年に最後の科挙試験が行われ、1905年には科挙制度自体が廃止されました。

出題内容

明

明の八股文は、「題前」と「正文」から構成されます。「題前」は序論にあたり、「破題」「承題」「起講」「領題」という部分からなります。「正文」は本論にあたり、「提比」「中比」「後比」「束比」という部分からなります。これらの8つの段落で構成され、「正文」の4つの部分がそれぞれ対句で構成されることから、「八股文」と呼ばれました。当初は文体が固定されていたわけではありませんでしたが、時代とともに形式が確立されました。出題内容は、四書を中心とした古典解釈や政策に関する論文でした。

清

清代に入ると、十股や十二股といった形式も現れ、形式は多様化しました。

まとめ

八股文は、明・清時代の科挙において重要な役割を果たした文体ですが、形式主義に偏り、真の人材育成を妨げたという批判もあります。しかし、全国各地から人材を集めるための手段として、一定の役割を果たしたことも否定できません。

参考文献

三田村泰助『明と清』（河出書房、1969年）
三田村泰助『生活の世界歴史2 黄土を拓いた人びと』（河出書房、1976年）
宮崎市定『科挙 中国の試験地獄』(中公新書、1979年) ISBN 4-12-100015-3, (中公文庫BIBLIO、2003年) ISBN 4-12-204170-8

関連項目

科挙
明
清
論語
孟子
大学
中庸
* 儒林外史

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