六〇豪雪

六〇豪雪（昭和60年豪雪）とは

六〇豪雪（ろくゼロごうせつ）、または昭和60年豪雪（しょうわ60ねんごうせつ）とは、1984年（昭和59年）から1985年（昭和60年）にかけての冬に、北陸地方を中心に発生した記録的な大雪災害です。この豪雪により、48人もの尊い命が失われ、159人が重傷、214人が軽傷を負うという甚大な被害が発生しました。また、災害救助法が16の自治体に適用される事態となりました。

この冬の降雪の特徴として、降雪が特定の地域に集中し、大部分の地域では平年並みの積雪量であったことが挙げられます。そのため、この年は局地的な豪雪に見舞われた年として記録されています。

1984年12月：暖冬予想から一転、記録的な大雪へ

1984年12月、初旬は穏やかな気候で、12日には東京で最低気温が11.1℃と、平年より7.5℃も高い気温を記録しました。北関東では最高気温が平年を10℃以上も上回る暖かさでした。気象庁が発表した3か月予報でも、1月、2月ともに暖冬傾向になると予測されていました。

しかし、その後の気象状況は一変します。中国東北部にあった寒気団が日本海方面へと南下したため、22日にはこの冬初の大雪に関する情報が発表されました。24日には、北海道稚内市の上空500ヘクトパスカル地点で-53.8℃という観測史上最低の気温を記録しました。同日9時までの24時間には、青森県深浦町で54センチメートル、新潟県上越市で53センチメートルの降雪を観測しました。

翌25日には、沖縄県を除くほぼ全域で冬日となり、北海道など一部地域では積雪が1メートルを超える状況となりました。新潟市では最高気温が-0.4℃と、12月としては35年ぶりに真冬日となりました。

交通機関への影響

大雪は、交通機関にも大きな影響を与えました。25日午前4時40分ごろには、信越本線（現・えちごトキめき鉄道妙高はねうまライン）の二本木駅と関山駅の間で貨物列車が立ち往生し、この影響で急行「能登」が高田駅で運転を見合わせました。「出雲」号は7時間以上、「東海道・山陽新幹線」も最大30分の遅延が発生し、名神高速道路の一部区間が通行止めになりました。

26日も大雪は続き、寝台特急「北陸」が小出駅で運転を見合わせるなど、交通機関の混乱はさらに拡大しました。同日9時の時点で、新潟県十日町市では積雪が153センチメートルに達していました。年末の帰省ラッシュと重なり、28日には特急「白山」が長野駅で運転を見合わせたほか、多くの路線でダイヤが大幅に乱れ、首都圏へ引き返さざるを得ない帰省客もいました。同日発の夜行列車は、「日本海」をはじめ13本が運休となりました。これを受け、日本国有鉄道は臨時列車を運行し、雪害対策本部を設置しました。

立ち往生する列車も相次ぎ、「雷鳥14号」は信越本線米山駅で、「とがくし1号」は高田駅で、それぞれ13時間以上立ち往生し、乗客は車内で夜を明かすこととなりました。28日には、北陸地方を中心に雪が再び強まり、上越市の積雪は184センチメートルと、12月としては観測史上3位を記録しました。青森市でも117センチメートルと、12月としては観測史上3位となりました。翌29日発の夜行列車も17本が運休となりました。

一方、上越新幹線や東北新幹線は、豪雪対策が功を奏し、平常運転を続けました。そのため、30日の上越新幹線下り一番列車の乗車率は260パーセントに達しました。

雪害による人的被害

26日から30日までの5日間で、新潟県内では豪雪の影響で死者12人、行方不明者1人、重軽傷者31人に達しました。特に、高齢者が1人で行う除雪作業中の事故が多発し、スノーダンプに引っ張られて転落する事故が多く発生しました。このため、長岡市は除雪作業時の事故に注意するよう、広告で呼びかけました。

記録的な降雪量と低温

12月の北陸地方の降雪量は、観測史上1位となる記録的な大雪となりました。12月全体の降雪量は平年値の5.57倍、12月下旬に限ると平年値の14.12倍に達しました。また、12月下旬の北陸地方の平均気温も観測史上最も低く、平年値より3.9℃も低いという記録的な寒さとなりました。

1985年1月：秋田県でも大雪、太平洋側は水不足

年が明けた1985年1月7日からは秋田県で大雪となり、寝台特急「あけぼの」が羽後境駅で運転を見合わせるなど、奥羽本線などで影響が出ました。13日午後からは新潟県で吹雪となり、14日14時ごろには、西頸城郡能生町（現・糸魚川市）にある工場の屋根が、約130センチメートル積もった雪の重みで崩落し、8人が負傷する事故が発生しました。

29日夜からは再び日本海側各地で大雪となり、翌30日には上越市で298センチメートル（戦後当時観測史上1位）、富山市で137センチメートルの積雪を観測しました。この日は、九州以北のほぼ全域で氷点下の気温となり、9時の時点で降り始めからの降雪量が上越市で77センチメートルに達しました。大阪市などでもこの冬初めて積雪を観測しました。信越本線では4本の列車が運休し、東海道・山陽新幹線が速度制限の影響で遅延しました。

翌31日には青森市で142センチメートルの積雪を観測しました。交通機関の混乱は続きましたが、一方で、太平洋側では1月は降水量が非常に少なく、水不足が深刻化していました。

1985年2月：太平洋側でも降水、土砂災害も発生

2月に入ると、冬型の気圧配置は長続きしなくなり、太平洋側でも降水が見られるようになりました。これにより、太平洋側の水不足は解消に向かいました。10日には北海道函館市で91センチメートルの積雪が観測され、観測史上1位タイの記録となりました。

16日には、西頸城郡青海町（現・糸魚川市）で、積雪が融け地盤が緩んだことが原因で土砂崩れが発生し、10人もの命が失われました。19日午後からは関東地方でも降雪があり、21時には前橋市で10センチメートルの積雪が観測されました。この雪の影響で、中央本線の特急「あずさ」が甲府駅で10時間半にわたり立ち往生しました。

この月の太平洋側の降水量は、平年の2倍から3倍に達しました。

まとめ

六〇豪雪は、記録的な大雪と低温により、北陸地方を中心に甚大な被害をもたらしました。交通機関の麻痺、除雪作業中の事故、土砂災害など、様々な問題が発生し、多くの人々の生活に深刻な影響を与えました。この豪雪の教訓は、今後の防災対策にも活かされるべきでしょう。

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