六合雑誌

六合雑誌：日本のキリスト教界と社会思想を彩った雑誌

明治13年(1880年)、東京で誕生した『六合雑誌』は、日本のキリスト教史において重要な役割を果たした定期刊行物です。東京青年会（後の東京YMCA）を母体とし、小崎弘道、井深梶之助、田村直臣、植村正久といった先覚者たちによって創刊されました。超教派の協調を基盤に、キリスト教の真理探究と社会問題への関与を掲げ、時代の誤謬を正すことを目指したこの雑誌は、その後の日本のキリスト教界、ひいては社会思想に多大な影響を与えました。

超教派の協働と初期の活動

『六合雑誌』の設立は、異なる宗派を超えたキリスト教徒の協力という、当時としては画期的な試みでした。キリスト教の研究、信仰生活の深化、そして社会問題への積極的な関与という、多角的なアプローチを通じて、キリスト教の真理を広く社会に伝えようとしたのです。創刊号から活発な議論が展開され、多様な視点からの寄稿が誌面を彩りました。

マルクス主義紹介という歴史的意義

『六合雑誌』が日本の歴史に名を刻んだ出来事の一つに、マルクス主義の紹介があります。明治14年(1881年)5月号に掲載された小崎弘道の「近世社会党ノ原因ヲ論ス」は、日本で初めてマルクス主義を紹介した文献として知られています。この論文は、当時の日本の社会状況とマルクス主義の思想を結びつけ、大きな反響を呼びました。この出来事は、『六合雑誌』が単なる宗教雑誌にとどまらず、時代の思想的潮流にも深く関与していたことを示しています。

警醒社への移管と執筆陣の変化

明治16年(1883年)、『六合雑誌』の刊行は警醒社へと引き継がれます。これにより、雑誌の運営体制は変化し、組合教会に属する執筆者も増加しました。この移管は、雑誌の運営基盤を強化するだけでなく、新たな視点や意見を取り入れる機会をもたらしました。

ユニテリアンとの合併と終刊

明治31年(1898年)、『六合雑誌』はユニテリアンの機関紙『宗教』と合併。日本ゆにてりあん弘道会が発行主体となりました。その後、明治33年(1900年)には三並良が編集長に就任するなど、雑誌は新たな時代を迎えます。しかし、大正10年(1921年)2月発行の第41巻第2号をもって、『六合雑誌』は終刊を迎えます。

主要執筆者と多様な寄稿

『六合雑誌』には、三浦関造、横井時雄、新井奥邃、浮田和民、原田助、村井知至、クレイ・マコーレーなど、当時の著名な知識人や宗教関係者が多数執筆しました。彼らの多様な視点と深い知識が、雑誌の内容を豊かにし、多くの読者に影響を与えました。特に村井知至は、惟一会説教者として知られる一方で英語学者でもあり、その専門性を活かした寄稿も注目に値します。

『六合雑誌』の遺産

『六合雑誌』は、その創刊から終刊まで、日本のキリスト教界に大きな足跡を残しました。超教派の協力による雑誌発行、マルクス主義の日本への紹介、ユニテリアンとの合併など、数々の歴史的事件に関わっただけでなく、多様な執筆者による深い議論は、今日の私たちに多くの示唆を与えてくれます。日本の近代社会とキリスト教思想の変遷を理解するためにも、『六合雑誌』の歴史を振り返ることは、非常に意義深いと言えるでしょう。 この雑誌は、単なる宗教雑誌の枠を超えて、社会思想史においても重要な位置を占めているのです。

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