共存同衆

共存同衆とは

共存同衆は、1874年（明治7年）に小野梓を中心に設立された政治的啓蒙言論結社です。設立メンバーには、万里小路通房、岩崎小二郎、尾崎三良、大内青巒、広瀬進一、赤松連城といった、当時20代を中心とした若き俊英たちが名を連ねました。この組織は、欧米への留学経験を持つ人々が集まり、互いに切磋琢磨しながら国民の啓蒙を目指すことを目的としていました。

設立と機能

小野梓が命名した「共存同衆」は、相互扶助の精神を基盤とするボランタリーな組織として機能しました。その活動は多岐にわたり、以下のような6つの主要な役割を担っていました。

1. 政治: 政府への提言や意見具申を通じて、政治改革を目指しました。
2. 学術・教育: 私立学校の設立や演説講習会「習演会」を開催し、教育の普及に貢献しました。
3. 言論: 「講談会」での演説を通じて、社会問題に関する議論を活発化させました。
4. 出版: 機関誌『共存雑誌』の発行や「共存文庫」の開設を通じて、思想啓蒙を行いました。
5. 集会・親睦: 「共存集同館」を建設し、会員間の交流を深めました。
6. その他: 幅広い社会文化的活動を通じて、社会の発展に貢献しました。

活動目的と運営方針

共存同衆の活動ルールは、1874年に「共存同衆条例」として明文化されました。この条例は、諸言、本文、臨席心得から構成され、その諸言では活動目的が明確に述べられています。その主な主張は、欧米列強への対抗、国家独立、近代化の達成、藩閥政府と士族民権の協調、旧来の思考習慣からの脱却でした。これらの目的を達成するために、市民の連帯を深め、自覚を促し、議論すべきことは議論し、救済すべきことは救済し、補助すべきことは補助することを通じて、市民の権利と義務の意識を高めることを目指しました。

条例の本文は全28条から成り、以下のような具体的なルールが定められています。

人間共存の道を推奨し、そのための議論を重視する。
提案がある場合は、事前に概要を伝え、次回の許可を得る。
月に2回、10日と25日を定例会とする。
重要な議決には3分の2以上の賛成を必要とする。
議論内容を公開する際には3分の2の同意を得る。
議長は毎回無記名投票で選出する。
新会員は推薦者1名と3分の2以上の賛成が必要である。
女性の入会も認められるが、会の秩序を保つための措置も講じられた。

臨席心得として、大声の禁止、議長への発言、起立しての発言、喫煙の禁止など、会議の秩序を保つためのルールが定められていました。これらのルールは、西欧の制度や思想、文化を研究し、会員相互の思想の修養を図るためのものでした。

共存集同館

共存同衆の活動拠点として、1877年4月には銀座に「共存集同館」が建設されました。この2階建ての西洋館は、街路樹とガス灯に囲まれたモダンな建物で、図書館としても一般に開放されていました。共存同衆文庫の開設までの間、情報発信の場として重要な役割を果たしました。

参加者と寄稿者

共存同衆には、犬養毅、井上哲次郎、岩崎弥之助、尾崎行雄、菊池大麓、島地黙雷、島田三郎、高橋是清、田口卯吉、谷干城、鳩山和夫、武者小路実世、磯野計など、様々な分野で活躍した人物が参加しました。彼らの出身地は多岐にわたり、留学先もイギリスやアメリカが中心でした。共存雑誌や講談会で議論された内容は、法律、教育、理財商業、衛生の4つが主要テーマであり、具体的提案を伴う点が特徴でした。議論されたトピックには、議会政治、民法・刑法の整備、条約改正、女性の地位向上、民衆の権利意識の啓蒙、国産品保護育成、政府財政批判などがありました。

特徴と意義

共存同衆の最大の意義は、「共存の道」というイデオロギーを日本で初めて公式に宣言し、その普及と実現のための政治的啓蒙活動を行った点にあります。小野梓の功利主義思想、東洋の伝統思想、改革派仏教徒の参加など、様々な要素が融合し、独特な思想が形成されました。また、文明開化の時代風潮に適合した組織として、政府の容認、市民の支持、優秀な人材の集結、組織の確立、民主的運営、そして会員たちの高い理想と奉仕精神が、組織の存続を支えました。

同時期の他の結社

同時期には、森有礼らの明六社など、他の結社も活動していました。明六社は洋学者が中心でしたが、共存同衆は欧米への留学生が中心でした。明六社が活動を休止した後も、共存同衆は社交クラブとして存続しました。また、板垣退助らの立志社、福沢諭吉らの三田演説会なども、この時代の重要な結社でした。

まとめ

共存同衆は、明治初期の日本において、西欧の思想と日本の伝統を融合させ、新しい社会の創造を目指した重要な結社でした。その活動は、日本の近代化に大きな影響を与えたと言えるでしょう。

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