共観福音書

共観福音書とは

共観福音書とは、キリスト教の聖典である『新約聖書』に収められた4つの福音書のうち、「ヨハネによる福音書」を除く、「マタイによる福音書」、「マルコによる福音書」、「ルカによる福音書」の3つを指します。これらの福音書は、記述内容や表現に多くの共通点が見られることから、相互に比較研究する上で重要な位置を占めています。

これらの3つの福音書は、同じ出来事を異なる角度から描写しているため、内容を比較することで、イエス・キリストの生涯や教えに対する理解を深めることができると考えられています。

共観表の登場

共観福音書という名称は、これらの福音書の本文を比較対照し、一覧にした「共観表」（シノプシス）が作成されたことに由来します。共観表は、各福音書の記述を並列に表示することで、共通点や相違点を容易に把握できるようにしたものです。この共観表の作成によって、福音書研究は大きく進展しました。

「ヨハネによる福音書」は、他の3つの福音書とは異なり、イエス・キリストを神として明確に描いている点や、思想・神学的な深みがより強調されている点が特徴です。そのため、共観福音書には含まれません。

3つの福音書の共通点と相違点

「マルコによる福音書」は、他の福音書と比較して最も古い時期に書かれたと考えられており、その661節のうち、606節が「マタイによる福音書」と、320節が「ルカによる福音書」と共通の内容を含んでいると言われています。

しかし、共観福音書には、それぞれの福音書の著者が誰であるかは明記されていません。「マタイ」、「マルコ」、「ルカ」という名前は、2世紀になって初めて現れるもので、実際の著者は不明とされています。この点も、共観福音書研究における重要な課題の一つです。

共観表の重要性

共観表は、主要な言語で出版されており、福音書研究を行う上で不可欠な基礎資料となっています。日本では、かつて塚本虎二氏によって編集された共観表が存在しましたが、長らく入手困難な状況が続いていました。2000年代に入り、本格的な共観表が出版されるようになり、福音書研究は再び活性化しています。

一般的な共観表では、「ヨハネによる福音書」の並行箇所も併記されています。さらに、外典である「トマスによる福音書」の並行箇所を併記して、「五書共観表」とする例もあります。

脚注

1. 共観福音書は、イエス・キリストの生涯や教えを理解するための重要な手がかりとなります。
2. 共観表は、福音書研究の発展に大きく貢献しました。

出典

荒井献編 『総説 新約聖書』 日本基督教団出版局、昭和56年(1981年)、ASIN B000J7VUNA
戸田, 聡 (2016). “福音書（正典・外典）におけるイエス像－古典としての聖書－”. 21世紀のキリスト教と聖書：日本基督教学会北海道支部公開シンポジウム記録 4: 63-86. https://researchmap.jp/orienschristianus/published_papers/15302463/attachment_file.pdf.

関連項目

福音書
Q資料
トマスによる福音書
共観福音書の問題

もう一度検索