内教坊

内教坊（ないきょうぼう）は、古代日本の律令制下における令外官の一つであり、雅楽や舞踊の教育機関としての役割を担っていました。その歴史は古く、設置時期は明確ではありませんが、少なくとも淳仁天皇の時代にはその存在が確認されています。元正天皇の時代には、内教坊の前身となる組織が存在していたとする説も存在します。

職掌と概要

内教坊の主な職掌は、宮廷における舞踊や音楽の教習でした。特に、女性に対してこれらの技能を教えることが重視されていました。教習生は「伎女（ぎじょ）」と呼ばれ、高度な技能を習得し、宮中行事などで活躍しました。

内教坊は、平安京においては大内裏の北東、上東門付近に位置していました。この場所は、宮廷文化の中心に近い場所であり、内教坊の重要性を示唆しています。しかし、院政期に入ると、内教坊は次第に衰退していきました。

鎌倉時代前期には、まだ舞の教習が行われていた記録が残っていますが、この頃には内教坊の施設は倉庫代わりに使われたり、神事と仏事が重なった際の臨時の仏事会場として用いられることが多くなりました。13世紀後半には、内教坊は名前だけの存在へと変わり、実質的な活動は停止しました。

職員構成

内教坊には、以下の役職が置かれていました。

別当（べっとう）: 内教坊の長官であり、組織全体の管理・運営を統括しました。北畠親房が別当に就任したことは、当時としても非常に名誉なことでした。
頭預/預師（とうあずかり/あずかりし）: 具体的な職務内容は不明な点もありますが、教習の指導者的な役割を担っていたと考えられています。
伎女（ぎじょ）: 教習生であり、舞踊や音楽の技能を習得しました。
女孺（にょじゅ）: 内教坊に所属する女性の下級職員でした。

衰退とその後

内教坊が衰退した背景には、律令制の弛緩や社会情勢の変化など、様々な要因が考えられます。院政期以降、宮廷文化の中心が変化し、内教坊の役割も縮小していきました。鎌倉時代には、その施設が本来の目的とは異なる用途で使用されるようになり、組織としての実態は失われていきました。

内教坊は、日本の古代・中世における音楽・舞踊文化の一翼を担った重要な機関でした。その衰退は、時代の流れとともに宮廷文化が変容していく過程を示すものと言えるでしょう。

関連項目

日本の官制
雅楽寮
大歌所
楽所
教坊：古代中国における機関
妓女（中国）
* 妓生（朝鮮)

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