内藤元盛

内藤元盛（ないとうもともり）

内藤元盛は、戦国時代から江戸時代初期にかけての武将で、毛利氏に仕えました。佐野道可（さのどうか）という別名でも知られています。大坂の陣で豊臣方として参戦したことで、その名が歴史に残っています。

生涯

永禄9年（1566年）に、毛利元就の外孫である宍戸元秀の次男として生まれました。母は内藤興盛の娘であり、母方の伯父である内藤隆春の養子となり、内藤家の家督を継ぎました。

慶長19年（1614年）、大坂冬の陣が勃発。毛利氏は徳川方として参戦しましたが、元盛は毛利輝元と執政・秀元の密命を受け、佐野道可と名を変えて軍資金と兵糧を携え大坂城に入城しました。この背景には、元盛の実母が輝元の叔母にあたり、養父である内藤隆春が輝元の伯父にあたるという親密な関係がありました。また、当時内藤氏が元盛の実兄・宍戸元続の仲介で毛利家から借財をしていた事情も影響しています。

慶長20年（1615年）の大坂夏の陣で豊臣方は敗北し、滅亡。元盛に従っていた幸田匡種は大坂城落城の際に戦死し、笠井重政は行方不明となりましたが、元盛は京都郊外に潜伏しました。しかし、元盛が毛利一門であることは幕府に露見し、本多正純は毛利秀就に、伏見にいた元盛の兄・元続に対し、元盛を捕縛して差し出すよう要求しました。さもなければ、家康は輝元が元盛に大坂城への籠城を命じたと判断すると告げました。

追い詰められた元続は、元盛の捕縛を決意。毛利家による厳しい捜索の末、元盛は潜伏先の京都郊外で捕らえられました。

取り調べを担当した大目付・柳生宗矩に対し、元盛は豊臣家への恩義から個人的な行動であり、毛利家とは無関係であると主張しました。そのため、幕府は毛利氏の陰謀を追及することができませんでした。同年5月21日、元盛は兄・元続によって山城国桂里大藪村鷲巣寺に連行され自刃。享年50歳でした。元盛の首級は本多正純に差し出され、事件は一応の収束を見ました。元盛の死を悲しんだ元続は、その後まもなく家督を嫡男・広匡に譲り隠居しました。

しかし、元盛の大坂籠城が家康の知るところとなり、同年7月5日、輝元は事情を知る元盛の嫡男・元珍と次男・粟屋元豊を上洛させ、家康の処断を仰ぎました。元珍と元豊は、父・元盛の籠城は独断であると釈明し、家康は2人が元盛の籠城とは無関係であると認めて帰国させました。

ところが、同年10月19日、幕府の追及を恐れた輝元の命により、元珍は周防国佐波郡富海の滝谷寺で、元豊は長門国美祢郡岩永で自刃させられました。元盛の妻であった綾木大方は輝元の仕打ちに激怒し非難しましたが、輝元は元珍の子・元宣を幽閉し、家名存続の約束を反故にしたため、内藤氏は一時断絶しました。

慶安元年（1648年）、元宣の子である隆昌（元盛の曾孫）が再び毛利氏の家臣となり、1,300石を与えられて内藤家は再興されました。

大阪城入城に関する逸話

元盛の大坂城入城計画は、輝元、秀元、当主の秀就、そして兄の宍戸元続のみで秘密裏に練られ、実行に移されました。毛利家中の慎重派で親徳川派であった吉川広家と福原広俊は、後にこれを聞いて非難したとされています。

輝元と秀就は、元盛に対し次のような誓詞を与えていました。

「今度元続を以て頼んだ事、分別して上坂され神妙の至り。生々世々忘れない。約束した事は必ず守る」
「嫡子の本家は勿論、その兄弟の分家まで将来とも見捨てず取り立てるから安心してほしい」
* 「大坂ではどんな事があってもお互い申し通じてはならない。城中の首尾、然るべきよう頼み入る」

元盛の2人の息子が自刃したことを知った柳生宗矩は、その死を悼み、宍戸元続と都野惣右衛門の両名に書状を送ったと伝えられています。

歴史研究家の堀智博は、これらの逸話には信憑性がなく、元盛は天正17年（1589年）に輝元から勘気を蒙って追放されており、牢人として拠り所のない元盛は、輝元の意思とは無関係に大坂籠城を行ったという独自の見解を示しています。

脚注

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