冬のくちびる

冬のくちびる

「冬のくちびる」は、1984年9月1日に美空ひばりによってリリースされたシングルです。この楽曲は、ひばりの総合プロデューサーであった境弘邦氏がプロデュース兼ディレクターを務めました。

制作の背景

前作までのディレクターであった中村一好氏が、都はるみさんとの熱愛発覚と都さんの引退発表に伴い、ディレクター職を辞任したため、境氏がリリーフとして就任しました。1980年の「おまえに惚れた」や1982年の「裏町酒場」など、異色のイメージを打ち出した時期とは異なり、本作は正統派演歌路線への回帰となりました。

楽曲制作の過程

作詞が先に行われ、その詞に基づいて作曲が行われました。境氏は、ひばりの地方公演興行出発までに楽曲を完成させるスケジュールを組みましたが、期日を過ぎても作曲家の船村徹氏から連絡がありませんでした。ようやく曲が完成したものの、船村氏が泥酔状態であったため、デモテープの取得が大幅に遅れました。

ひばりは、レコーディングに臨む上で作曲家の意図を理解することを重要視していました。そのため、デモテープの入手が必須でした。境氏は、船村氏の弟子が吹き込んだと偽ってデモテープを制作し、ひばりに渡しましたが、ひばりは船村本人のデモテープを強く求めました。

再度、境氏は船村氏のもとを訪れ、泥酔状態ながらも船村氏本人の弾き語りによるデモテープを入手しました。ひばりは、そのデモテープを聴き、「よくわかった。先生のおっしゃるイメージが伝わったわ。境さんも大変だったわね。どうもありがとう」と述べ、境氏を驚かせました。この出来事を通じて、境氏はプロ同士の通じ合う何かを悟り、ディレクターの仕事に専念したいと考えるようになったそうです。

禁煙のエピソード

楽曲制作のために、ひばり、作詞家の石本美由起氏、作曲家の船村氏、そして境氏の四人で会食が行われました。その席で、ヘビースモーカーである船村氏がタバコを吸い始めたところ、ひばりは「喉に悪い」とタバコを嫌いました。その後、同じくヘビースモーカーであった境氏が廊下で一服していると、ひばりが仲居と話していました。席に戻ると、仲居が禁煙パイポをひばりに手渡し、ひばりはそれを船村氏に「お体に良くないですよ」と笑顔で渡しました。船村氏は照れながらも「最高のプレゼントですね」と言い、その後タバコを吸わなかったそうです。

収録曲

1. 冬のくちびる
作詞：石本美由起
作曲：船村徹
編曲：南郷達也
2. 女ながれ唄
作詞：石本美由起
作曲：船村徹
編曲：丸山雅仁

アルバム収録

この楽曲は、1985年8月21日に発売されたアルバム「夢ひとり」にも収録されています。

アルバム「夢ひとり」収録曲

1. 夢ひとり
2. ビロードの夜
3. 冬のくちびる
4. 残侠子守唄
5. 裏町酒場
6. 人恋酒
7. おまえに惚れた
8. 真赤な太陽
9. 悲しい酒
10. 柔
11. ひばりの佐渡情話
12. 港町十三番地
13. リンゴ追分
14. 悲しき口笛

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