冷泉為満

冷泉為満は、安土桃山時代から江戸時代初期にかけて活躍した、高貴な家系に生まれた公卿であり、優れた歌人としても知られています。権中納言を務めた冷泉為益を父に持ち、上冷泉家の9代当主として、正三位・権大納言という高い官位に上り詰めました。

しかし、為満の生涯は平穏なものではありませんでした。天正13年（1585年）、山科言経、四条隆昌と共に、突如として朝廷から厳しい処分（勅勘）を受け、故郷である京都を離れることを余儀なくされます。行き場を失った為満は、妹が本願寺門主・顕如の次男である興正寺顕尊と結婚していた縁を頼り、言経、隆昌と共に本願寺に身を寄せ、保護を受けながら厳しい日々を過ごしました。

為満の不在によって、上冷泉家は断絶したと見なされ、新たな当主を選ぶ必要が生じます。そこで、中山親綱の子が冷泉為親として迎えられ、上冷泉家の家督を継ぐこととなりました。為満不在のまま、為親は冷泉家の家系を支えていました。

それから年月が流れ、慶長3年（1599年）、為満は朝廷からの赦免を受け、ようやく勅勘が解かれました。しかし、為満が戻った時、冷泉家の家督は既に為親が継いでおり、為満は元の地位を取り戻すことができませんでした。それでも、為満の功績と家柄を考慮し、朝廷は為満に新たな堂上家を創設することを許しました。これが後に今城家として知られる家系です。

為満の私生活にも、大きな悲劇がありました。文禄5年（1596年）に発生した慶長伏見地震では、愛する妻を失うという痛ましい経験をしています。地震による災害は、為満の心に深い傷跡を残したに違いありません。

数々の苦難を経験しながらも、為満は元和5年（1619年）まで生き抜き、その生涯を閉じました。彼の波乱に満ちた人生は、権力闘争の激しさ、そして時代の変動を如実に示すものであり、現代においても多くの関心を集めています。為満の子孫は、藤谷家など、様々な家系を築き、日本の歴史に影響を与え続けました。為満の生涯は、歴史の転換期を生きた一人の公卿の物語として、そして、時代の流れに翻弄されながらも、自らの道を切り開こうとした人間のドラマとして、後世に語り継がれるべきものです。

為満の系譜を見ると、父は冷泉為益、母については記録が残されていません。妻は津守国繁の娘であり、男子には為頼、次男には後に藤谷家を興した為賢がいます。また、娘たちは、鷹司教平の妻、綾小路高有の側室となりました。養子には、前述の冷泉為親がいます。為満の生涯と家系は、安土桃山時代から江戸時代初期にかけての日本の歴史を理解する上で、重要な手がかりを与えてくれます。

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