劉伯林

劉伯林（りゅう はくりん）：金朝からモンゴルへ、時代を駆け抜けた漢人世侯

劉伯林は、金朝末期からモンゴル帝国初期にかけて活躍した人物で、漢人世侯の一人として知られています。彼は西京（現在の大同）を中心とした軍閥を築き、その勢力は無視できないものでした。

生涯

済南府出身の劉伯林は、若い頃から任侠を好み、騎射に長けていました。その能力が認められ、金朝において威寧県の防城千戸に任じられます。しかし、1212年、チンギス・カン率いるモンゴル軍が威寧県を包囲すると、彼はモンゴル軍の圧倒的な力に抗えないと判断し、開城して降伏しました。

劉伯林は、旧金朝領の漢人の中で最も早くモンゴル帝国に投降した有力者の一人です。彼の降伏をきっかけに、多くの漢人軍閥がモンゴルに帰順し、彼らは後に「漢人世侯」と呼ばれるようになります。チンギス・カンは劉伯林の能力を高く評価し、降伏前の官職をそのままに、配下の兵を選抜して耶律禿花の指揮下に入るよう命じました。

チンギス・カンが金朝から軍を引くと、劉伯林は天成県に駐屯し、金朝の奪還軍と数十回にわたり戦いました。また、西京攻略にも参加し、これらの功績により金虎符を与えられ、西京留守兼兵馬副元帥に任じられました。西京路はオゴデイの領地であり、以後、劉伯林の一族はオゴデイ家と密接な関係を築いていきます。

1219年、劉伯林は潞州、絳州、火山県、聞喜県などを攻略しました。モンゴル軍内部から聞喜県の住民を天成県に移住させる意見が出ましたが、彼は民を苦しめ、混乱を招く愚策であるとして撤回させ、1万を超える捕虜を解放しました。

威寧県を10年以上にわたり治めた際には、農業を奨励し、住民に十分な休息を与えました。その結果、威寧県は近隣の県と比較して楽土と称えられました。劉伯林は、この評価に対し「数千人を活かした者は必ず後世封を受けるであろうと聞いたことがある。吾は数万人を活かしたので、子孫は必ず栄えるだろう」と語ったと伝えられています。

1221年、劉伯林は病のため72歳で亡くなりました。彼の死後、息子の劉黒馬が後を継ぎました。劉伯林・劉黒馬父子の「西京劉氏」軍閥は、漢人世侯の中でも特に有力視され、南宋からモンゴルに派遣された使者が記した『黒韃事略』では、東平の厳実、真定の史天沢、保定の張柔と並び称され、「多くの漢人軍閥があるが、この4名の兵数の多さと強大さに及ぶ者はいない」と評されました。

劉伯林は、激動の時代において、その卓越した決断力と民を思う心で、自らの勢力を拡大し、地域に安定をもたらしました。彼の功績は、後世にまで語り継がれています。

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