耶律禿花

耶律禿花（やりつ トガン、生没年不詳）は、モンゴル帝国に仕えた契丹人の千人隊長（ミンガン）です。兄の耶律阿海（やりつ アハイ）と共に、契丹人の中では最も早くチンギス・カンに仕え、モンゴル帝国内でモンゴル人に次ぐ非常に高い地位を与えられました。

ペルシア語史料『集史』などでは طوقان وانشی（Ṭūqān Wānshī）と表記されており、「禿花」という名前はトガン（Toγan）という名前が元になっていると考えられています。

略歴

トガンは遼の宗室である契丹貴族、耶律撒八児（やりつ さっぱつじ）の孫で、耶律脱迭児（やりつ だっだつじ）の子として生まれました。トガンの一族は代々桓州（かんしゅう）に居住し、12世紀末には金朝に仕えていました。

13世紀初頭、チンギス・カンが勢力を拡大すると、トガンらはこれに帰順し、チンギス・カンと共にバルジュナ湖の濁水を飲んだ「バルジュナト」の一員にもなっています。

1211年にチンギス・カンによる金朝遠征が始まると、トガンらは桓州一帯の遊牧民を率いてモンゴル軍に合流し、金朝侵攻の先導役を務めました。1217年、チンギス・カンはジャライル部のムカリに金朝との戦いの指揮権を委ね、自身はモンゴリアに帰還して西方遠征の準備を始めました。

この時ムカリの配下に入った武将には、マングト千人隊を率いるモンケ・カルジャ、ウルウト4千人隊を率いるケフテイ、コンギラト3千人隊を率いるアルチ・ノヤン、イキレス2千人隊を率いるブトゥ・キュレゲン、諸部族混合兵を率いるクシャウルとジュスク、そして現地徴発の契丹・女真・漢人兵を率いるウヤル元帥とトガン元帥（耶律禿花）らがいました。

トガンはその後も劉黒馬（りゅう こくば）、史天沢（し てんたく）らを率いて金朝との戦いに従事しましたが、西河州（せいかしゅう）にて亡くなりました。

トガンの地位は、息子のジュゲ（朱哥）が継承しました。

参考文献

* 志茂碩敏『モンゴル帝国史研究 正篇』東京大学出版会、2013年

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