王仁恭

王仁恭（おう じんきょう）

王仁恭（558年 - 617年）は、中国の隋代に活躍した政治家であり、軍人でした。字は元実といい、天水郡上邽県を本貫とします。

生涯

北周の鄯州刺史であった王猛の子として生まれ、20歳で鄯州主簿となります。その後、隋の秦王楊俊に才能を認められて記室となり、長道県令を経て車騎将軍にまで昇進しました。楊素の指揮下で突厥討伐に参加し、その功績により上開府の位を授けられます。さらに、驃騎将軍として典蜀王軍事を務め、山獠の反乱を鎮圧するなど、軍事面で目覚ましい活躍を見せました。

蜀王楊秀が廃位されると、その属官の多くが連座して罪に問われましたが、王仁恭は文帝にその実直さを認められ、罪に問われることはありませんでした。

604年に煬帝が即位すると、漢王楊諒が反乱を起こしますが、王仁恭は楊素の下で鎮圧に貢献。その功績により大将軍に進み、呂州刺史に任じられます。その後、衛州刺史、汲郡太守と任地を変え、各地でその有能さを発揮しました。特に汲郡では、異動の際に住民が引き止めて離さず、その人望の厚さが窺えます。

隋が高句麗へ遠征を行った際には、軍将として参加。第一次遠征では、撤退時にしんがりを務めて高句麗軍を撃破し、左光禄大夫に進みました。第二次遠征では、扶餘道を進軍し、新城で高句麗軍を破るなど、戦功を重ね、光禄大夫に進んでいます。しかし、楊玄感が反乱を起こした際、甥の王仲伯が参加したため、連座して免官となりました。

その後、突厥が隋の北辺を侵犯するようになると、煬帝は王仁恭の軍事的な才能を評価し、本官に復帰させて馬邑太守を領させました。始畢可汗率いる突厥軍が馬邑に侵攻すると、兵力3000に満たないながらも、精鋭を率いてこれを撃退。二人の特勤を討ち取るという殊勲を挙げました。その後も、突厥軍を撃退するなど、その武勇を示しました。

しかし、隋末の混乱が激化すると、王仁恭はかつての公正さを失い、賄賂を受け取って蓄財に励み、民衆を救済しようとしませんでした。617年、校尉の劉武周が王仁恭の侍婢と密通していたことが発覚するのを恐れ、反乱を決意。「王府君は官倉を閉ざして百姓を救おうとしない」と民衆を扇動し、王仁恭が庁舎で執務中に襲撃、殺害しました。享年60歳。

王仁恭の死は、隋の衰退を象徴する出来事の一つと言えるでしょう。

伝記資料

『隋書』巻六十五 列伝第三十
『北史』巻七十八 列伝第六十六

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