始畢可汗

始畢可汗（シビル・カガン）

始畢可汗（Sibir qaγan）は、7世紀初頭に東突厥を統治した可汗であり、その在位期間は隋末から唐初にかけての激動の時代と重なります。彼の登場は、東アジアの政治情勢に大きな影響を与えました。

生涯

始畢可汗は、啓民可汗の子として生まれました。彼の即位は、609年に父が亡くなった後、国人たちによって推戴されたことによります。彼は即位後、まず隋との関係を維持するため、父の妻であった義成公主を娶ることを隋に請願し、これが許可されました。このレビラト婚は、当時の突厥の風習を示すものです。

しかし、隋との関係は長くは続きませんでした。615年、始畢可汗は数十万の騎馬軍団を率いて隋に侵攻し、煬帝を雁門で包囲するという事態を引き起こしました。この事件により、隋との朝貢関係は完全に断絶しました。

隋末の混乱期において、始畢可汗は竇建徳、王世充、薛挙、李軌、劉武周、梁師都、高開道といった各地の反乱勢力から臣下の礼を受け、彼らに称号を与えました。これにより、東突厥の勢力は大きく拡大しました。

唐の建国者である李淵（後の高祖）も、挙兵に際して始畢可汗に協力を求めました。617年、李淵は劉文静を使者として始畢可汗のもとに派遣し、挙兵への協力を要請。始畢可汗はこれに応じ、康鞘利らを派遣して馬を献上し、李淵の挙兵を支援しました。

唐が建国された後も、始畢可汗は唐との関係を維持しました。618年には、骨咄禄特勤を唐に派遣し、高祖は彼を太極殿で宴に迎えました。

しかし、619年、始畢可汗は死去しました。彼の死後、東突厥は後継者争いにより分裂し、その勢力は衰退に向かいました。子の什鉢苾が幼かったため、泥歩設が幽州北東に住み、弟の俟利弗設が処羅可汗となりました。

妻子

可賀敦（カガトゥン：皇后）
義成公主

子

什鉢苾（突利可汗）
結社率

始畢可汗の評価

始畢可汗は、東突厥の勢力を拡大し、隋末の混乱期において大きな影響力を持った人物として評価されています。彼の外交手腕や軍事力は、当時の東アジアの政治情勢を大きく左右しました。また、唐の建国にも間接的に関与したことから、その歴史的な意義は大きいと言えるでしょう。

参考資料

『隋書』
『旧唐書』
『新唐書』
佐口透・山田信夫・護雅夫訳注『騎馬民族誌２正史北狄伝』（1972年、平凡社）

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