文聘

文聘（ぶんぺい）

文聘（生没年不詳）は、後漢末から三国時代の魏にかけての武将で、字は仲業（ちゅうぎょう）。荊州南陽郡宛県（現在の河南省南陽市宛城区）の出身です。子に文岱（ぶんだい）、従子に文厚（ぶんこう）、養子に文休（ぶんきゅう）がおり、孫には文武（ぶんぶ）がいます。『三国志』魏志にその名が記されています。

生涯

元々は劉表（りゅうひょう）に仕え、その大将として荊州北部の守備を担っていました。208年、劉表の死後、子の劉琮（りゅうそう）が後を継ぎますが、曹操（そうそう）が荊州へ侵攻すると、劉琮は降伏を決意します。曹操は文聘にも協力を求めましたが、文聘は「州を守れなかった責任を取る」として拒否しました。

曹操が漢水を渡河したのを見て、文聘はついに曹操のもとへ出頭します。遅れた理由を問われた文聘は、「荊州を守れなかったことが情けなく、顔向けできなかった」と涙ながらに答えました。曹操はその忠義を高く評価し、字で呼びかけ親しみを込め、手厚く遇しました。兵を与えられ、曹純（そうじゅん）と共に長坂（ちょうはん）で劉備（りゅうび）を追撃する任務に就きました。

劉備を破り荊州を平定した曹操は、孫権（そんけん）との国境に近い江夏郡（こうかぐん）の安定化のため、文聘を江夏太守に任命し、旧劉表軍を統率させ、関内侯（かんないこう）の爵位を与えました。荊州の戦い後、劉備軍の関羽（かんう）を楽進（がくしん）と共に尋口（じんこう）で討ち取るという功績を挙げ、延寿亭侯（えんじゅていこう）に昇進、討逆将軍（とうぎゃくしょうぐん）を加えられました。赤壁の戦いの前後には、関羽軍の輜重（しちょう）を漢水で攻撃したり、荊城（けいじょう）において関羽の船を焼き払うなど、戦果を挙げました。

曹丕（そうひ）（文帝）の時代には長安郷侯（ちょうあんきょうこう）となり、仮節（かせつ）を与えられました。222年、夏侯尚（かこうしょう）が呉の江陵（こうりょう）を包囲した際には、別働隊を率いて沔口（べんこう）に駐屯する任務を与えられ、途中の石梵（せきぼん）で敵を防御する功績を挙げ、後将軍（こうしょうぐん）となり新野侯（しんやこう）に封じられました。

226年、孫権は曹丕の死に乗じて自ら5万の兵を率いて江夏へ攻め込みましたが、文聘は動じることなく城を堅守しました。孫権が江夏郡の石陽（せきよう）を包囲するも、曹叡（そうえい）が援軍として荀禹（じゅんう）を派遣し孫権の後方を撹乱したため、孫権は二十余日で包囲を解き撤退しました。その撤退戦において、文聘は混乱に乗じて殿軍を追撃し大いに打ち破りました。防衛の功績により500戸の加増を受け、1900戸となりました。

数十年にわたり江夏を守り続けた文聘のおかげで、ついに江夏が陥落することはなく、その威光と恩愛は敵国にも轟き、誰も侵攻することができなかったと言われています。死後、壮侯（そうこう）と諡（おくりな）されました。

文聘の生前、所領は分割され、子の文岱が列侯に取り立てられ、従子の文厚も関内侯に封じられました。文岱は父に先立って死去したため、養子の文休が後を継ぎ、その死後は孫が跡を継ぎました。

人物評

陳寿（ちんじゅ）は、文聘を李通（りつう）・臧覇（ぞうは）・呂虔（りょけん）と共に、州郡を守り威厳と恩恵を示した人物として称えています。
孫盛（そんせい）は、文聘を君主に忠義を尽くし、涙で誠実さを示したと評価し、曹操が方面軍を任せた優れた人物の一人として臧覇と共にその名を挙げています。

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