力真樹

元大相撲力士 力真 樹（りきしん たつき）

力真樹は、1995年10月7日に熊本県球磨郡多良木町で生まれた元大相撲力士です。本名を久保田 樹といい、現役時代は立浪部屋に所属していました。身長190cm、体重160kgという恵まれた体格を持ち、力任せの相撲が持ち味でした。これは、同じ部屋で同学年の同期である明生関の、柔らかさを活かした相撲とは対照的でした。最高位は2017年5月場所の東十両10枚目。若くして出世し、その体格から大いに将来を期待されていましたが、度重なる怪我に苦しみ、わずか21歳という若さで相撲人生に幕を下ろしました。引退後は、横浜市保土ケ谷区の天王町で「ダイニングバーJOGO（ジョーゴ）」の店長を務めています。

相撲界への道のり

久保田少年は、多良木町立黒肥地小学校3年生の時に柔道を始めましたが、稽古相手がいなくなったことを理由に5年生で一度辞めました。多良木町立多良木中学校に進学後、再び柔道を再開。中学3年間は柔道部に所属していましたが、中学2年生の時に立浪親方（元小結・旭豊）によるスカウトを受け、柔道の強豪高校からの推薦入学の話を断り、裸一貫で勝負できる大相撲の世界に進むことを決意しました。入門前の相撲経験は、小学校1年生から年に一度の地域大会に参加していた程度でした。

初土俵と各段昇進

入門を決めた頃は、大相撲界が八百長問題などの不祥事で揺れ、新弟子検査を受けても本場所が中止になるという異例の時期でした。しかし、力真は立浪部屋に入門し、2011年5月の技量審査場所で初土俵を踏みます。前相撲は二番出世でした。同期には、同部屋の明生のほか、千代大龍、照ノ富士、常幸龍、白鷹山といった後の関取衆が名を連ねています。初土俵から名乗った「力真」の四股名は、後援企業が販売する人形の名称に由来しています。

2011年7月場所で序ノ口、9月場所で序二段へと順調に昇進しましたが、この頃はなかなか相撲に集中できず、同期の明生が着実に番付を上げるのを横目に、1年以上も序二段で足踏みを経験しました。2013年1月場所で三段目に上がると、同年7月場所では6勝1敗と大きく勝ち越しましたが、続く9月場所では自己最高位で初めて休場。2014年に入り、3月場所で再び6勝1敗の好成績を挙げ、5月場所も勝ち越したことで、18歳で新幕下に昇進しました。

幕下優勝と関取昇進

新幕下となった2014年7月場所、力真は関取経験者の鬼嵐や鳰の湖らを破るなど快進撃を見せます。そして、勝てば幕下優勝となる7番目の相撲で舛ノ湖に勝利し、見事に新幕下での幕下優勝を果たしました。10代の力士が新幕下で全勝優勝を達成するのは、柏戸関、貴乃花関に次ぐ史上3人目の快挙でした。この頃には、貴乃花部屋や伊勢ヶ濱部屋への出稽古で関取衆や幕下の強豪との稽古も重ねて実力を磨いていました。

一気に幕下上位まで番付を上げた9月場所からは2場所連続で負け越しを喫しますが、2015年9月場所では初日から連敗したものの、そこから6連勝で6勝1敗とし、幕下の優勝決定戦に進出するなど復調の兆しを見せます。2016年3月場所で再び6勝1敗の好成績を挙げると、関取昇進が見える番付で5月場所から勝ち越しを続けました。9月場所では自己最高位となる西幕下5枚目で5勝2敗と勝ち越しましたが、東幕下3枚目で4勝3敗とした同期の明生が先に新十両昇進を決めました。わずか半枚の差で関取の座を逃した力真は、後援者から化粧廻しを共に製作したことを伝えられるなど、周囲からの期待を背負って11月場所へ臨みます。

この場所、土つかずの4連勝スタートで21歳での新十両昇進を確実なものとし、最終的に6勝1敗の好成績を収めました。場所後の番付編成会議で、2017年1月場所での新十両昇進が正式に決定。初土俵から約5年半での関取昇進でした。福岡県太宰府市での記者会見では「うれしいというのもあったし、またここからスタートという気持ち」と語り、先に昇進した同期の明生に対しては「番付を抜いてやろうと思っていた」とライバル心を覗かせました。目標に師匠の番付を超えることを掲げましたが、師匠の立浪親方からは「これから努力しないと。全然足りない」と激励を受けていました。

十両での苦闘と早期引退

新十両として迎えた2017年1月場所は、千秋楽に勝ち越しをかけたものの敗れて7勝8敗と一歩届かず、十両残留は決定的となったものの勝ち越しはなりませんでした。続く3月場所では、十両の地位で初めて勝ち越しを決め、千秋楽まで優勝争いに加わる活躍を見せ、9勝6敗の成績で場所を終えました。

しかし、4月に入ってからの春巡業でアクシデントに見舞われます。4月13日の川崎場所で貴ノ岩関とのぶつかり稽古を行った後、約15分に及ぶ激しい稽古により過呼吸のような症状を訴えました。さらに20日の柏場所でも同様の体調不良を訴え、救急車で病院へ緊急搬送される事態となりました。この巡業中の過酷な稽古が影響したのか、続く5月場所、7月場所と連続して負け越し、わずか4場所で十両の地位から陥落することになりました。

幕下へ落ちた9月場所は、場所前から休場。7月場所後に膝の手術を受けていましたが、相撲が取れるまでに回復することが難しい状況でした。そのため、この場所限りでの引退を決断し、9月23日に日本相撲協会から引退届が受理されたことが発表されました。21歳でのあまりにも早い引退でした。

エピソードと現在

新十両だった2017年1月場所の初日、初めての十両土俵入りで、ワンテンポ早く手を叩いてしまうという微笑ましい所作のミスがありました。また、部屋のある茨城県つくば市の企業から化粧廻しを贈られていました。

現役引退に際して、所有していた締め込みのうち1本を、引退後に兄弟子の天空海関に譲っています。これはライムグリーンの色をした締め込みで、力真自身が現役時代に使用しなかったものを「十両に上がったら締めて下さい」と言って譲ったものです。天空海関は2018年9月場所でその締め込みを使用しましたが、残念ながらこの場所の成績は振るわず、幕下へ逆戻りとなっています。

短い現役生活ではありましたが、幕下優勝という輝かしい実績と、将来を期待させるポテンシャルを示した力真樹。現在は相撲界を離れ、横浜市で飲食店を経営する傍ら、新たな人生を歩んでいます。

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