加古 (重巡洋艦)

重巡洋艦「加古」：河川の名を冠した唯一の重巡洋艦とその激動の生涯

「加古」は大日本帝国海軍が保有した古鷹型重巡洋艦の2番艦です。1926年7月の竣工と同時に、世界に先駆けて20cm砲を搭載した巡洋艦となりました。その艦名は、兵庫県を流れる加古川に由来しています。

誕生と軍縮会議の影響

「加古」の建造計画は1921年3月に、5500トン型軽巡洋艦として4隻同時建造が計画されたことに始まります。しかし、1922年のワシントン海軍軍縮会議の結果を受け、建造は中止されました。その後、軍縮会議で建造が制限された艦艇の予算を転用する形で、排水量7100トンの新型一等巡洋艦（7000トン以上の巡洋艦）の建造が決定。「加古」の名が、この新型一等巡洋艦に転用されたのです。

日本海軍では重巡洋艦（一等巡洋艦）に山の名前をつけるのが慣例でしたが、「加古」は例外的に河川名となりました。これは、ワシントン海軍軍縮会議の基準排水量では軽巡洋艦に分類される可能性があったため、艦名を変更せずに建造を進めたとの見解もあります。結果的に古鷹型は計画を上回る排水量となり、軽巡洋艦となることはありませんでした。そのため、河川名を冠した重巡洋艦は「加古」が唯一の存在となりました。

建造と太平洋戦争前

「加古」は1922年11月17日に川崎造船所で起工、1925年4月10日に進水しました。竣工は1926年7月20日でしたが、竣工直前のクレーン事故による船体損傷が影響し、「古鷹」よりも遅れました。竣工後は横須賀鎮守府籍となり、第五戦隊に編入。太平洋戦争開戦までは、日本近海や中国沿岸で訓練や作戦支援に従事しました。

1927年には美保関事件に遭遇。「神通」、「那珂」が大破する中、「加古」は沈没した駆逐艦「蕨」や損傷艦の救援に当たりました。その後も近代化改装を複数回実施。1936年にはワシントン海軍軍縮条約失効を見据え、大規模な近代化改装を受け、主砲、機関、魚雷発射管などを強化しました。

1941年3月1日には、「古鷹」、「青葉」、「衣笠」と共に第六戦隊を編成。太平洋戦争開戦時には五藤存知少将を司令官として、南西方面の作戦に参加しました。

太平洋戦争での活躍と沈没

「加古」は真珠湾攻撃後のグアム島攻略作戦、ウェーク島攻略作戦に参加。その後もラバウル攻略、ラエ・サラモア方面攻略作戦、ブーゲンビル島方面攻略作戦など、南方・ソロモン諸島方面で激戦を繰り広げました。

1942年5月には珊瑚海海戦に参加。同海戦では水上偵察機の行方不明や、敷設艦「沖島」の救援活動などがありました。ミッドウェー海戦後にはガダルカナル島攻略作戦に参加し、同島への進出部隊を支援しました。

第一次ソロモン海戦では、米豪連合軍艦隊と交戦し、敵重巡洋艦の撃沈に貢献しましたが、カビエンへの帰投途上、1942年8月10日早朝、米潜水艦「S-44」の雷撃を受け沈没しました。乗員約700名中、約70名が戦死しました。

エピソードと艦内神社

「加古」には多くのエピソードが残されています。進水式には皇族が列席、外国軍艦との交流、近代化改装における技術交流など、様々な出来事が記録されています。また、艦内神社は日岡神社で、境内に有志寄贈の絵が飾られていたことが知られています。

「加古」の沈没は、日本海軍にとって大きな損失となりました。チェスター・ニミッツ太平洋艦隊司令長官も、その喪失の効果について言及しています。その生涯は、日本海軍の変遷、そして太平洋戦争の激しさを象徴するものです。

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