東宮鉄男

東宮鉄男：満洲移民の父、その生涯と足跡

東宮鉄男（とうみや かねお、旧字体：東宮鐵男、1892年8月17日 - 1937年11月14日）は、日本の陸軍軍人であり、「満洲移民の父」として知られています。彼は満洲を中心に活動し、張作霖爆殺事件の実行者として、また満洲への移民を推進した中心人物として歴史に名を刻んでいます。日中戦争初期に戦死し、死後、陸軍大佐に特進しました。

生い立ちと軍歴

東宮鉄男は、1892年（明治25年）8月17日、群馬県勢多郡宮城村大字苗ヶ島で、9人兄弟の末弟として生まれました。父は群馬県士族で村長を務めた東宮吉勝です。旧制前橋中学校利根分校で3年間学んだ後、同本校に編入し1911年（明治44年）に卒業しました。1912年（大正元年）12月1日に士官候補生として近衛歩兵第3連隊に入隊し、1913年（大正2年）12月1日に陸軍士官学校に入学、1915年（大正4年）5月25日に卒業（27期）しました。同年12月25日に陸軍歩兵少尉に任官し、近衛歩兵第3連隊附を命ぜられます。

1919年（大正8年）4月に中尉に進級。翌年6月に歩兵第50連隊附に移り、シベリア出兵に参加しました。この経験から、赤軍の強さを実感し、ソ連のコサック兵をモデルとする武装農民の必要性を痛感し、対抗策を模索し始めます。1923年（大正12年）1月から1年間広東に私費留学し、中国語を習得しました。1925年（大正14年）8月に大尉に進級し、1926年（大正15年）3月には近衛歩兵第3連隊中隊長を命ぜられ、同年12月に独立守備隊第2大隊中隊長として奉天に駐屯しました。

張作霖爆殺事件

1928年（昭和3年）6月4日、張作霖爆殺事件において、東宮は実行者として爆破スイッチを押したとされています。当時の中国は各地で軍閥が割拠しており、その一人である張作霖は北平で安国軍政府を樹立し、「陸海軍大元帥」を自称していました。張作霖は日本軍の支援で満洲の王者になりましたが、勢力を拡大し、米英に接近する動きを見せたため、日本側の懸念が高まっていました。関東軍は、張作霖を排除し、傀儡政権を樹立するか、より直接的に満洲を支配しようという意向を強めていました。このような背景の中、関東軍高級参謀の河本大作大佐を中心に、張作霖爆殺事件が計画されました。

1928年（昭和3年）6月4日午前5時23分、東宮は事前に小部隊を率いて爆破地点である皇姑屯に潜伏し、張作霖を乗せた列車が奉天郊外の鉄橋に差し掛かったところで爆破スイッチを押しました。橋脚に仕掛けられた爆薬が炸裂し、列車は大破。張作霖は重傷を負い、後に死亡しました。事件後、関東軍は中国人の謀略に見せかけるため、偽装工作を行いましたが、真相は秘匿されました。

事件後の東宮

事件後、東宮は1929年（昭和4年）8月に岡山にある歩兵第10連隊中隊長に移ります。東宮は1930年（昭和5年）3月の日記に、河本大佐を気遣う言葉を記しており、退職も覚悟していましたが、連隊長の慰留を受けました。当時、歩兵第10連隊に勤務していた棟田博の回想によると、東宮は他の将校と馴染もうとせず、一風変わった振る舞いをしていたとされています。しかし、勇猛果敢な中隊長であり、その純情熱血は多くの人に感銘を与え、周囲からは至誠の人と評価されていました。

武装移民団の推進

張作霖爆殺事件後、東宮は満蒙開拓移民の構想を抱き、積極的に上申しました。満洲を日本の生命線としていた関東軍首脳はこの構想に強い関心を示しました。1931年（昭和6年）12月に満洲出張を命ぜられ、翌年4月に関東軍司令部附となり、満洲国軍政部顧問に就任。この時、拓務省や農本主義者の加藤完治らと協力して、日本から満洲への移民を推進しました。

東宮は、国境付近に開拓団を配置し、有事の際には防衛拠点・兵站として活用するという考えを持っていました。1932年（昭和7年）10月には、在郷[[軍人会]]所属の独身男性からなる第一次武装移民団を結成し、満洲の佳木斯へ送り出しました。しかし、入植地は決まっておらず、到着後すぐに匪賊の襲撃を受け、移民団は困難な状況に置かれました。その後、入植地は弥栄村と改称され、移民団は過酷な環境の中で生活することになりました。移民団は地元住民との間でトラブルを起こし、「匪賊よりも恐ろしい日本人移民」とまで言われ、問題が多発しました。

日中戦争での戦死

1933年（昭和8年）8月、少佐に進級。同年9月23日、匪賊との戦闘で負傷し入院。1937年（昭和12年）8月に内地帰還を命ぜられましたが、10月に歩兵第102連隊大隊長として日中戦争に出征。同年11月14日、浙江省平湖県で部下の先頭に立って進軍中に被弾し戦死。辞世の句を遺し、死後大佐に特進しました。

東宮鉄男の生涯は、満洲移民政策における重要な役割と、その複雑な歴史的背景を示しています。彼の業績は、今日においても様々な議論を呼んでいます。

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