加藤定吉

加藤定吉：日露戦争から第一次世界大戦、そして軍縮会議まで―海軍軍人の波瀾万丈な生涯

加藤定吉（1861年-1927年）は、明治から大正期にかけて日本の海軍を代表する軍人の一人です。海軍兵学校首席卒業という輝かしい経歴を持ち、日露戦争、第一次世界大戦といった激動の時代を生き抜き、数々の要職を歴任しました。その生涯は、日本の近代海軍史を語る上で欠かせない存在と言えるでしょう。

海軍兵学校から佐世保鎮守府へ

東京で幕臣の子として生まれた加藤は、沼津兵学校付属小学校を経て、明治16年（1883年）、海軍兵学校を27人中首席で卒業。同期には、のちに海軍大将となる山下源太郎や名和又八郎といった錚々たる顔ぶれが名を連ねています。卒業後は長浦水雷営に勤務し、その後も「迅鯨」、「高千穂」、「比叡」など各艦艇で水雷に関する実務経験を積みました。明治22年（1889年）からは、佐世保鎮守府で赤松則良長官の伝令使を務め、軍政官としてのキャリアをスタートさせます。

ドイツ留学と日清戦争への不参加

明治24年（1891年）から明治26年（1893年）にかけて「高雄」の水雷長・砲術長を務めた後、伏見宮博恭王のドイツ留学に随員として同行。そのため、日清戦争には参加しませんでした。帰国後は「厳島」の水雷長や常備艦隊参謀を歴任し、着実にキャリアを積み重ねていきます。

西郷従道元帥との出会い

明治30年（1897年）8月、西郷従道海軍大臣の秘書官に就任。西郷元帥からの厚い信頼を得て、その副官を務めるようになります。1年半にわたる近侍を通して、加藤は政治・外交の知識や人脈を深め、中佐に昇進。この経験が後のキャリアに大きく影響を与えることになります。

日露戦争と日本海海戦

明治34年（1901年）からは軍令部副官を務め、伊東祐亨大将や西郷元帥といった海軍の重鎮と密接な関係を築きます。その人脈と能力は、政財界との良好な関係構築にも役立ち、海軍拡張の必要性を訴える機会にも恵まれました。明治36年（1903年）からは再び海上勤務に戻り、「秋津洲」、「橋立」の艦長として日露戦争に参加。特に明治38年（1905年）1月、「春日」艦長に抜擢され、日本海海戦にも参加しました。

青島攻略作戦の指揮

大正2年（1913年）、加藤は第2艦隊司令長官に任命されます。第一次世界大戦勃発を受け、青島攻略作戦を指揮。老朽艦艇を駆使しながらも、ドイツ極東艦隊を撃退し、青島を攻略することに成功しました。この功績により、加藤の名声はさらに高まりました。その後、海軍教育本部長、呉鎮守府司令長官などを歴任し、大正7年（1918年）、大将に昇進します。

軍縮会議への反対と晩年

大正8年（1919年）からは軍事参議官となり、海軍の重鎮として、政策決定に大きな影響力を持つようになりました。しかし、当時勃興しつつあった航空機に対しては懐疑的な立場を取り、大艦巨砲主義の立場を貫きました。ワシントン軍縮会議にも反対の立場を取り、その発言は大きな波紋を呼びました。大正12年（1923年）に予備役編入後も、貴族院議員として政治活動を続けましたが、昭和2年（1927年）に65歳で亡くなりました。

まとめ

加藤定吉の生涯は、日本の近代海軍史における激動の時代を象徴するものです。彼は、優れた指揮官としてだけでなく、軍政官としても高い能力を発揮する存在でしたが、現場での活躍が中心でした。その経験則に基づいた発言は、時に保守的なものと受け取られましたが、彼の海軍への貢献は、間違いなく日本の歴史に刻まれています。彼の功績は、現代においても海軍の伝統を語る上で重要な要素であり続けるでしょう。

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