赤松則良

赤松則良：日本近代造船の礎を築いた幕末の志士

赤松則良(1841-1920)は、幕末から明治期にかけて活躍した稀代の技術者にして政治家です。
「日本造船の父」と称される彼は、武士、華族、海軍軍人、そして貴族院議員という多様な顔を持つ人物でした。その波乱に満ちた生涯は、日本の近代化に大きく貢献した足跡を刻んでいます。

幕臣から海軍中将へ：技術と知識を求める航海

播磨国(現在の兵庫県)の名族・赤松氏の末裔を称する赤松良則を祖父に持ち、幕府御徒士の次男として江戸で生まれた赤松則良は、幼少期からオランダ語を習得し、蕃書調所に勤めました。
その後、長崎海軍伝習所に入所して航海術を学び、日米修好通商条約批准書交換の使節団に咸臨丸で随行し渡米。さらに、幕府よりアメリカ留学を命じられますが、南北戦争の勃発によりオランダ留学に変更となります。

内田正雄、榎本武揚、澤太郎左衛門らと共にオランダへ渡り、造船技術や砲術、航海術などを熱心に学んだ赤松は、開陽丸の建造にも携わりました。帰国後、戊辰戦争に巻き込まれますが、榎本武揚らと共に静岡藩に身を寄せます。

明治維新後、赤松は明治政府に仕え、海軍中将にまで昇進。主船寮長官、横須賀造船所長、海軍造船会議議長、佐世保鎮守府初代長官など、要職を歴任しました。
彼の卓越した技術と指導力は、日本の近代造船業の発展に大きく貢献したのです。

政治家としての活動と晩年

明治20年(1887年)には男爵に叙爵され、貴族院議員にも就任。
政治家としても活躍した赤松は、日本海員掖済会の初代会長も務め、海事関係の発展にも尽力しました。

予備役編入後、静岡県磐田市に見付に隠居所を構え、晩年を過ごしました。現在もその建物は旧赤松家として一般公開されており、当時の生活の様子を垣間見ることができます。

多彩な人間関係と逸話

赤松則良の生涯は、数々の興味深いエピソードに彩られています。
咸臨丸での渡米時には、勝海舟から礼砲発射の号令を任されるなど、その能力は高く評価されていました。
また、オランダ留学中には、榎本武揚と共に第二次シュレースヴィヒ＝ホルシュタイン戦争を観戦し、前線の塹壕にまで足を運んだという逸話も残っています。
さらに、妻の貞は、オランダ留学に同行した林研海の妹であり、榎本武揚とは義兄弟関係にあったこと、長女の登志子が森鷗外に嫁いだ際の媒酌人が西周であったことなど、彼を取り巻く人間関係も時代の流れを反映しています。

日本の近代化への貢献

赤松則良は、幕臣として、海軍軍人として、そして政治家として、多方面で才能を発揮しました。
オランダ留学で得た造船技術は、日本の近代化に大きく貢献し、彼の名は「日本造船の父」として後世に語り継がれています。
その生涯は、単なる技術者や政治家の枠を超え、激動の時代を生き抜いた一人の日本人、そして近代日本の発展に貢献した重要な人物像を私たちに示しているのです。

参考文献

『赤松則良半生談　幕末オランダ留学の記録』赤松範一編・解説、平凡社東洋文庫、1977年。ワイド版2006年
『日本海員掖済会五十年史』日本海員掖済会、1929年。
* 霞会館華族家系大成編輯委員会『平成新修旧[[華族家系大成]]』上巻、霞会館、1996年。

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