加藤重徳

加藤重徳

加藤重徳（かとう しげのり）は、戦国時代から江戸時代前期にかけて活躍した武将です。通称は又左衛門（またざえもん）と伝わっています。

生涯

摂津国伊丹（現在の兵庫県伊丹市周辺）を拠点とした豪族、伊丹播磨守康勝の子として生まれました。伊丹家は代々室町幕府の側近として仕えており、細川藤孝や和田惟政といった周辺の有力武将・豪族と親族関係や同盟を結び、伊丹城を居城としていました。重徳は、伊丹家中でも特にその名を知られた存在でした。「伊丹城に重徳有り」と畿内に知れ渡るほど、知略と武勇に優れた武将として名を馳せていたと言われています。

当初は伊丹親興ら伊丹一族の中心人物と共に、足利義輝、次いで第15代将軍・足利義昭に側近衆として仕えました。しかし、織田信長によって義昭が都を追放されると、信長から摂津国を任された荒木村重のもとに身を寄せます。

天正6年（1578年）10月、村重は播磨での三木合戦において織田氏家臣・羽柴秀吉軍に加わっていましたが、突如として有岡城（かつての伊丹城を改称）にて信長に対し謀反を起こします（有岡城の戦い）。これに対し、秀吉は村重と旧知の仲であった小寺孝隆（後の黒田孝高、通称官兵衛）を使者として有岡城に派遣し、翻意を促そうとしました。しかし、村重は孝高の説得に応じず、彼を捕らえて城内の土牢に閉じ込めてしまいます。

有岡城が落城するまでの約一年間、孝高が土牢に監禁されている間、その牢番を務め、手厚く世話をしたのが重徳と伊丹、加藤一門であったとされています。天正7年（1579年）10月19日に有岡城が開城する際、重徳は黒田家の家臣である栗山利安らと共に孝高を土牢から救出しました。城の最期を悟り、運命を共にする覚悟を決めていた重徳は、幼い次男・玉松を黒田孝高に託します。玉松は黒田孝高の居城である姫路城で養子として育てられ、後に黒田姓を与えられて黒田一成と名乗ることになります。黒田一成は後に福岡藩の重臣となりました。

一方、重徳は長男・吉成を連れて有岡城を脱出しました。その後、宇喜多直家・秀家父子に仕え、次いで小西行長に仕官します。慶長5年（1600年）の関ヶ原の戦いにおいて、小西行長が敗れて処刑されたため、重徳は浪人の身となります。

しかし、次男である黒田一成が主君・黒田長政（孝高の子）に請願したこともあり、黒田家が治める福岡藩に召し抱えられることになりました。かつて有岡城の地下牢から黒田孝高を救出した功績が認められ、長男・吉成を祖とする加藤家の家系は、代々福岡藩の中老職という重責を担うことになります。

晩年は出家して禅の道に入り、博多の聖福寺の境内に庵を結んで静かに過ごしました。慶長7年（1602年）3月22日に死去したと伝えられています。重徳の死後、長男・吉成と次男・一成は、父が晩年を過ごした庵の跡に塔頭・節信院を建立し、加藤家の菩提寺としました。

逸話

福岡藩に招かれた後、重徳は筥崎宮の近くに隠居していたとされています。ある日、黒田孝高・長政親子が筥崎宮に参拝に訪れていることを知った重徳は、自宅で栽培していた生姜を持って筥崎宮へ向かいました。有岡城以来の再会を果たした重徳は、孝高に葉が付いたままの採れたての新生姜を献上しました。二人は久しぶりの再会を喜び、時を忘れて語り合ったと伝えられています。この逸話がきっかけとなり、新生姜が博多の三大祭りである筥崎宮の放生会の名物となったという説があるほどです。

登場する作品

軍師官兵衛（2014年NHK大河ドラマ、加藤又左衛門役、演：浜田学）
播磨灘物語（司馬遼太郎）

参考文献・外部リンク

* ふるさと歴史シリーズ｢博多に強くなろう｣（対談：吉永正春（地方史研究家）×井上雄介（福岡シティ銀行副頭取）、平成2年5月）（西日本シティ銀行ホームページより）

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