勅額

勅額（ちょくがく）とは

勅額とは、皇帝や天皇などの為政者が、国内の寺院に対して特に下賜する直筆の書で記された寺社額のことです。

中国の勅額制度

中国では唐の時代に、特定の寺院に勅額を下賜する制度が、国家公認の大寺に対する保護政策として行われていました。これは、招提や蘭若と称される非公認の小規模寺院の乱立を抑制する目的があったとされています。この制度は隋代にはすでに存在していたと考えられています。

宋の時代に入ると、太宗は天下の無額寺院に「太平興国」や「乾明」の寺額を下賜するよう命じました。その後も、北宋の皇帝たちが勅額下賜を度々行ったため、司馬光らに諌められています。勅額下賜の濫発は、修功徳による帝室の安泰祈願が目的であったと考えられています。また、勅額寺院の住持を朝廷が任命する「勅差住持制」も行われるようになりました。

五山十刹制度

南宋の寧宗の時代には、五山十刹制度が始まりました。これは、官寺を朝廷主導で序列化し、国家が住持を任命して、皇帝と帝室の安寧を祈祷すると同時に、非課税の恩恵を与える制度です。

五山
径山興聖万寿寺 - 杭州（浙江省）
北山景徳霊隠寺 - 杭州（浙江省）
南山浄慈報恩光孝寺 - 杭州（浙江省）
太白山天童景徳寺 - 明州（浙江省）
阿育王山鄮峰広利寺 - 明州（浙江省）

十刹
中天竺山天寧万寿永祚寺 - 杭州（浙江省）
道場山護聖万寿寺 - 湖州（浙江省）
蒋山太平興国寺 - 建康（江蘇省）
万寿山報恩光孝寺 - 蘇州（江蘇省）
雪竇山資聖寺 - 明州（浙江省）
江心山龍翔寺 - 温州（浙江省）
雪峰山崇聖寺 - 福州（福建省）
雲黄山宝林寺 - 婺州（浙江省）
虎丘山雲巌寺 - 蘇州（江蘇省）
天台山国清敬忠寺 - 台州（浙江省）

日本の勅額制度

日本にも勅額寺院が存在します。以下は重要文化財に指定されている勅額の例です。

日本の勅額寺院

上野寛永寺厳有院（徳川家綱）霊廟勅額門
上野寛永寺常憲院（徳川綱吉）霊廟勅額門
白峰寺木造頓證寺勅額（香川県坂出市）

参考文献

高尾義堅「宋代寺院の住持制」（『宋代仏教史の研究』百華苑、1975年）
竺沙雅章「寺觀の賜額について」（『中国仏教社会史研究』同朋社、1980年）

関連項目

揮毫
寺格
勅額火事（元禄11年） - 霊元天皇の勅額が江戸に到着した日に発生した火事。
京都五山
* 鎌倉五山

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