勇払平野

勇払平野

勇払平野は、北海道南西部に位置し、苫小牧市を中心とする広大な平野です。北は小高い丘陵地帯を経て石狩平野へと続き、南は太平洋に面しています。平野の大部分は苫小牧市域に属し、西側は市街地が広がっていますが、東側には勇払原野と呼ばれる自然豊かな地域が残っています。

経済と交通

勇払平野には、北海道の港湾貨物取扱量の40％以上を占める苫小牧港があり、北海道の経済を支える重要な拠点となっています。札幌都市圏との間の交通網も発達しており、石狩平野との繋がりも密接です。また、平野の東部は苫小牧東部開発地域として、苫小牧東港を中心とした重工業の誘致が進められてきました。当初は企業誘致が難航しましたが、近年では石油備蓄基地の建設や自動車部品、パソコン周辺機器などの企業の進出が増加しています。

勇払原野

勇払原野は、勇払平野の東部に広がる、自然環境が色濃く残る地域です。この地域は、支笏古火山や樽前山などの火山活動によって堆積した火山灰土壌で形成されています。かつては樽前川、勇払川、美々川などの河川が流れ込む湿地帯でしたが、現在ではその大部分が原野として残っています。

勇払原野は、当初から保護されていたわけではなく、石油危機による開発計画の中止によって、結果的に手つかずのまま残された約3万6千ヘクタールの土地です。そのため、東部の植苗地区や沼ノ端地区などでは、宅地化が進み、かつての原生林は失われてしまいました。

勇払原野には、ウトナイ湖に次ぐ渡り鳥の中継地である弁天沼がありますが、開発地域に含まれているため、鳥獣保護区には指定されていません。しかし、ラムサール条約に登録されているウトナイ湖では、多くの野鳥が観察でき、ハスカップの国内最大の群生地としても知られています。

日本野鳥の会によると、勇払原野では、チュウヒ、アカモズ、オジロワシ、タンチョウなど、絶滅危惧種を含む277種類の鳥類が確認されています。近年では、北海道大学の先崎理之助助教らが、シマクイナの繁殖を日本国内で初めて確認しました。しかし、原野東部で計画されている風力発電所に対して、バードストライクなどの懸念も指摘されており、環境保護の観点から見直しを求める声も上がっています。

地形と歴史

勇払原野は、海岸沿いに発達した砂嘴の内側の湖水が淡水化して形成された平野です。かつては海岸線沿いに数メートルの高さの砂丘がありましたが、近年の海岸侵食によってその多くが失われています。

関連情報

勇払原野は、1982年に井沢八郎がリリースしたシングル『勇払原野』のモチーフにもなっています。この歌は、勇払原野の自然と開拓の歴史を歌い上げており、地域の人々に愛されています。

勇払平野は、北海道の経済を支える重要な地域であると同時に、豊かな自然が残る貴重な場所でもあります。今後の開発と環境保護のバランスが、この地域の未来を左右するといえるでしょう。

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