動物咬傷

動物咬傷：種類、感染リスク、そして対処法

動物咬傷とは、動物に噛まれた際に生じる外傷です。一見軽微な傷でも、感染症を引き起こし、場合によっては生命に関わる危険性があります。本稿では、様々な動物による咬傷の特徴、感染リスク、そして適切な対処法について解説します。

ヒト咬傷

ヒト咬傷は、喧嘩などが原因で起こることが多く、手や顔面だけでなく、乳房や性器などにも生じることがあります。特に、拳で口付近を殴るようなケースでは、高い感染リスクが伴います。患者の隠蔽行動により治療が遅れることも多く、細菌の増殖が進んでしまうケースも少なくありません。HIV感染者の咬傷の場合、唾液中の阻害物質がウイルスを不活化するため感染リスクは低いものの、血液を介した感染には注意が必要です。

犬・猫咬傷

ペットによる咬傷は、特に感染症のリスクが高いです。猫に噛まれた場合は、60～80％の高い確率で感染症が発生します。犬の場合は4～20％と猫より低いものの、犬種によっては強い咬合力により、顔や手の皮膚や組織が大きく損傷することもあります。噛まれた際は、水道水や生理食塩水で十分に洗浄し、医療機関を受診することが重要です。必要に応じてワクチン接種なども検討されます。

その他の哺乳類咬傷

ネズミ咬傷では、特定の細菌による感染症が発生しやすいです。ペニシリン系の抗生物質が有効とされています。また、フェレットなど他の哺乳類の咬傷でも、蜂窩織炎などの感染症を発症する可能性があります。

魚類咬傷

ゴンズイやオコゼなど、特定の魚類に咬まれたり刺されたりした場合は、患部が腫れて赤くなり、強い痛みを伴います。高温のお湯に浸けることで痛みが和らぐ場合がありますが、改善が見られない場合は、医療機関での神経ブロック注射や局所麻酔が必要となる場合があります。破傷風予防のため、ワクチン接種が推奨されます。

爬虫類咬傷：特にヘビ咬傷

ヘビ咬傷は、非常に危険な動物咬傷です。世界では年間50万人がヘビに噛まれ、そのうち4万人が死亡しています。日本では、マムシやハブによる咬傷が問題となっています。

ヘビ毒

ヘビの毒は、血液に作用するものと神経に作用するものがあります。血液凝固異常（DIC）を引き起こす可能性があり、急性腎不全などの重篤な合併症につながる危険性があります。

有毒ヘビの鑑別

有毒ヘビに噛まれた場合は、傷の周囲に2つの牙の跡があり、患部が黒く変色していることが多いです。

ヘビ咬傷の対処法

1. 落ち着く: パニックになると毒の回りが早まります。
2. ヘビの種類を確認: 可能であれば、ヘビを捕獲して病院へ持参します。種類が分かれば、適切な抗血清を迅速に準備できます。
3. 患部を清潔にする: 水でよく洗い、清潔なガーゼで保護します。
4. 患部を心臓より低い位置に保つ: 毒の回りを遅らせるためです。ただし、縛ることは厳禁です。
5. 病院へ行く: 走らず、ゆっくりと移動します。

ヘビ咬傷の禁止事項

運動や飲酒：心拍数を上げ、毒の回りを早めます。
切開：感染リスクを高めます。
患部の縛り付け：患部の壊死リスクを高めます。
冷やす：効果がなく、壊死リスクを高めます。
* 自己判断での血清投与：アナフィラキシーショックの危険性があります。

結論

動物咬傷は、軽視できない危険性を伴います。適切な処置と医療機関への受診が不可欠です。特に、ヘビ咬傷など重症の場合は、迅速な対応が生死を分ける可能性があります。噛まれた動物の種類、咬まれた状況、患部の状態などを医師に正確に伝えることで、適切な治療を受けることができます。

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