勝長寿院

勝長寿院：源頼朝が建立した幻の寺院

勝長寿院は、現在の神奈川県鎌倉市雪ノ下に位置していました。鎌倉時代初期、源頼朝によって創建され、阿弥陀山勝長寿院と号しました。大御堂、南御堂とも呼ばれ、鶴岡八幡宮、永福寺と共に、当時の鎌倉における三大寺社として隆盛を誇りましたが、現在は廃寺となっています。

歴史

創建

元暦元年（1184年）、源頼朝が父・義朝の菩提を弔うため、大御堂ヶ谷に寺院の建立を決定しました。同年11月26日には地曳始の儀が行われ、工事が開始されました。

頼朝は後白河院に依頼し、平治の乱で命を落とした義朝の首を探索しました。義朝と、その腹心であった鎌田政清の首は、院の勅使となった大江公朝によって鎌倉へ届けられました。文治元年（1185年）9月3日、義朝の遺骨と政清の首は南御堂の地に埋葬され、平治の乱に関係した平賀義信やその子息・惟義、源頼隆ら限られた人物のみが立ち会いを許されました。同年10月24日には堂舎が完成し、盛大な落慶供養が執り行われました。

勝長寿院の本尊は阿弥陀如来像であり、奈良仏師の成朝によって製作されました。また、本尊背後の浄土壁画は、鎌倉宅磨派の祖である宅磨為久が担当しました。

源氏の菩提寺として

勝長寿院は源氏の菩提寺としての性格が強く、源氏一族の供養が手厚く行われました。三代将軍源実朝は暗殺後、勝長寿院の傍らに埋葬されました。

伽藍の焼失と再建

康元元年（1256年）12月、火災により伽藍が焼失しましたが、正嘉2年（1258年）に北条時頼によって再建されました。しかし、その後も度重なる火災に見舞われ、永仁3年（1295年）11月にも焼失しています。正中2年（1325年）には、同様に焼失した建長寺と共に、再建費用を得るために元との貿易を行う寺社造営料唐船（いわゆる建長寺船）が派遣されました。

衰退と廃寺

元弘3年（1333年）5月の鎌倉幕府滅亡後も、勝長寿院は鎌倉を治めた足利氏の鎌倉公方によって保護されました。しかし、足利成氏（古河公方初代）が享徳4年（1455年）に鎌倉から下総国古河へ移ると、同寺の門主であった成潤（成氏の兄弟）も反成氏勢力に擁される形で日光山で挙兵し、以降は有力者の庇護を失い衰退。16世紀頃に廃寺となったとされています。

跡地の現状

現在、勝長寿院の跡地周辺は宅地化が進み、遺構はほとんど残っていません。雪ノ下4丁目6-20付近に「勝長寿院旧蹟」の石碑と供養塔がひっそりと佇んでいます。

浄楽寺との関係

横須賀市芦名二丁目にある浄楽寺は、正式名を「金剛山勝長寿院大御堂浄楽寺」と称しています。寺伝によれば、勝長寿院の堂舎が建永元年（1206年）の台風で損壊した際、和田義盛と北条政子が本尊の阿弥陀如来像を現地に移して開山したと伝えられていますが、これはあくまで伝承の域を出ません。ちなみに、現在の浄楽寺にある阿弥陀如来像は運慶の作です。

勝長寿院は、鎌倉の歴史において重要な役割を果たした寺院でしたが、今はその面影を偲ぶことのできるものはわずかしか残っていません。しかし、その名は今も石碑に刻まれ、静かに歴史を語りかけています。

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