北大西洋振動

北大西洋振動（NAO）とは？

北大西洋振動（North Atlantic Oscillation、NAO）は、北大西洋におけるアイスランド低[[気圧]]とアゾレス高気圧の気圧配置の変動を指す気象現象です。これらの気圧配置の強弱や位置の変化は、北大西洋地域における大気の流れ、特に偏西[[風]]系に大きな影響を与えます。

NAOは、1920年代にギルバート・ウォーカーによって発見されました。エルニーニョ・南方振動（ENSO）と同様に、大気と海洋の相互作用によって発生するテレコネクションの一種です。アイスランド低[[気圧]]やアゾレス高気圧は、長期的な平均気圧分布に基づいて定義されたものであり、これらの気圧系の位置や強さが変動することで、NAOが発生します。

NAOのメカニズムと影響

NAOは、アイスランド低[[気圧]]とアゾレス高気圧間の気圧差によって示されることが多く、北大西洋振動指数（NAO index）として数値化されます。指数が正の値を示す場合、気圧差が大きく、偏西[[風]]が強まり、ヨーロッパには湿った空気が多く運ばれます。この状態では、西ヨーロッパでは冷涼で湿潤な夏と温和な冬となる傾向があります。

一方、指数が負の値を示す場合、気圧差が小さく、偏西[[風]]が弱まります。この状態では、ヨーロッパでは熱波や寒波が長期化する傾向があり、気温の変動が激しくなります。また、降水量も少なくなり、中欧では厳冬となる可能性があります。

NAOの影響は、ヨーロッパに留まりません。北アメリカ東部でも、NAO指数は天候に影響を与えます。特に冬期には、正のNAO指数は北極からの寒気団の南下を抑制し、アメリカ東部やカナダ南部では暖冬となる傾向があります。

NAOと海洋生態系

1970年代後半以降、NAO指数は正の値を示す傾向が強まりました。この変化は、北大西洋の海洋生態系に大きな影響を与えています。例えば、北西大西洋では海水温の低下により、ラブラドル海産ズワイガニの漁獲量が増加した一方で、タラの生息に適した水温を下回り、タラ漁獲量に悪影響を与えました。北海では、正のNAO指数によって海水温が上昇し、同様にタラの生息数が減少する傾向が見られます。

アメリカ東部では、正のNAO指数に伴う降水量の増加が、海の表層水の温度上昇と塩分濃度低下を引き起こし、湧昇を抑制して栄養分を減少させます。その結果、メイン湾やジョージバンクではタラの漁獲量が減少しています。

NAOに関する研究

NAOの影響は、海洋生態系だけでなく、陸上の生物にも及ぶことが示唆されています。例えば、セントキルダ群島のソーイ島に生息するソーイ羊の個体数とNAO指数の変動には強い相関性があるという研究結果もあります。

まとめ

北大西洋振動（NAO）は、北大西洋地域の天候や海洋生態系に大きな影響を与える重要な気象現象です。NAO指数は、その変動を把握するための重要な指標であり、長期的な気候変動予測や海洋資源管理において重要な役割を果たしています。 今後の研究により、NAOの予測精度向上や影響評価の更なる深化が期待されます。 NAOの変動メカニズムの解明や、その影響の地域的な違いをより詳細に理解することは、将来の気候変動対策や資源管理に役立つでしょう。

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