北愛国駅

北海道帯広市愛国町にかつてその姿を留めていた、日本国有鉄道（国鉄）広尾線の廃駅（はいえき）である。事務管理コードは▲111502が付与されていた。

歴史

北愛国駅は、昭和28年（1953年）11月15日に広尾線の新しい駅として開業しました。この駅は、地域の住民からの強い要望を受けて設置された請願駅であり、開業当初から旅客の乗降のみを取り扱うための駅として機能しました。そして、広尾線が全線廃止された昭和62年（1987年）2月2日をもって、その30年余りの歴史に静かに幕を閉じました。

駅名の由来

駅名の「北愛国」は、その名の通り、隣接する愛国駅のすぐ北側に位置していたことに由来しています。極めて単純明快な、地理的な位置関係に基づいた命名と言えます。

駅構造

廃止される直前の昭和62年時点において、北愛国駅は地上駅として、一本の線路に対してホームが一つだけ設けられた単式ホーム構造を有していました。このホームは、線路を挟んで東側に設置されており、広尾方面へ向かう列車から見ると左手にあたる位置でした。また、列車の行き違いや追い越しを可能にする分岐器（転轍機）を持たない、いわゆる「棒線駅」でした。開業当初から係員の配置されない無人駅であり、駅舎のような大きな建物はありませんでしたが、ホームの中央部分には、利用者向けの小さな待合所が設置されており、雨や雪をしのぐことができました。加えて、短い期間ではあったものの、地元の個人などに駅業務の一部を委託する簡易委託駅として機能し、乗車券の販売が行われていた時期も確認されています。具体的には、昭和56年（1981年）12月発行の乗車券の存在がそれを裏付けています。

利用状況

北愛国駅の利用状況は、決して多いものではありませんでした。例えば、昭和56年度（1981年度）における一日あたりの平均乗降客数はわずか10人でした。これは、当時の広尾線全体の利用状況を反映したものであり、特定の利用者層に支えられた小規模な駅であったことがうかがえます。

駅周辺

駅周辺には、現在も地域を結ぶ主要な道路である北海道道238号更別幕別線が通っており、近くには十勝地方を潤す雄大な札内川が流れています。駅が廃止された後、かつての駅に近い場所には、十勝バスの「北愛国交流広場前」停留所が設置され、地域の公共交通の一端を担っています。周辺は、のどかな田園風景が広がる中に、民家が点在する比較的静かな環境でした。

廃止後の状況と駅跡

広尾線の廃止後、代替交通としてバス路線が運行されることになりました。鉄道路線とは道路事情が異なるため、帯広駅を出て依田、北愛国を経由し愛国へ向かう、鉄道とは一部異なるルートの系統が設定されました。しかし、その後のバス路線網の再編を経て、残念ながらこの代替バス路線も平成18年（2006年）9月をもって廃止されました。現在、この地域を走る公共交通機関は限られており、主にスクールバスとしての役割も兼ねた愛国・大正方面への路線が運行されているにとどまっています。

北愛国駅の跡地については、現在、バスの待合所として整備されており、かつての駅として利用されていた痕跡はわずかしか残っていません。かつては、駅の存在を記憶にとどめるためのささやかな記念碑が設置されていた時期もありました。具体的には、平成11年（1999年）頃には、近くにある北愛国会館の脇に「広尾線北愛国駅跡地」と記された小さな標柱が建てられていたことが確認されています。しかし、残念ながら平成22年（2010年）頃にはすでにこの標柱は撤去されており、現在ではその姿を見ることはできません。

その他

北愛国駅が属していた国鉄広尾線は、国鉄再建の過程で廃止対象となった「特定地方交通線」の一つとして指定されていました。地方の過疎化や自動車の普及（モータリゼーション）といった時代の流れの中で、利用者の減少が進み、最終的に路線廃止へと至った背景があります。広尾線における北愛国駅の隣駅は、帯広方面に向かって依田駅、そして広尾方面に向かって愛国駅でした。愛国駅は、「愛国から幸福ゆき」という語呂合わせの乗車券がブームとなり一躍有名になり、現在も交通記念館として当時の駅舎などが保存されていますが、北愛国駅はそのような全国的な注目を浴びることはなく、静かにその役目を終えました。

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