北郷三久

北郷三久（ほんごう みつひさ）

北郷三久は、戦国時代から江戸時代初期にかけて活躍した武将であり、日向国と薩摩国の両国にまたがる領地を治めました。北郷氏は、島津氏の有力な支族であり、三久は北郷氏宗家10代当主・北郷時久の三男として生まれました。兄には11代当主の北郷忠虎がいます。

三久は、北郷氏の分家である平佐北郷氏の初代当主となり、平佐（現在の鹿児島県薩摩川内市平佐町）を領しました。また、母が島津義弘の先妻であったため、義弘の娘である御屋地とは異父姉弟という関係でした。

生涯

天正元年（1573年）に日向国都城で生まれた三久は、島津氏の一員として数々の戦に参加しました。小田原征伐や文禄・慶長の役にも従軍し、その武勇を示しました。

文禄3年（1594年）には、兄である忠虎の命により三股（宮崎県三股町）を領有しました。同年、忠虎が朝鮮で病死したため、北郷氏の家督は幼少の長千代丸が継ぐこととなりました。しかし、長千代丸が幼かったため、島津氏は義久と義弘の連署により、三久が17歳になるまで家督代行を務めるよう命じました。

文禄4年（1595年）、豊臣秀吉の命によって島津氏の領地替えが行われ、北郷氏宗家は都城から祁答院へと移されました。三久もまた、三股から平佐へ移ることとなり、都城は伊集院忠棟の領地となりました。都城は、北郷氏が足利尊氏から与えられて以来、長く領有してきた地であったため、この移転は北郷氏にとって大きな痛手であり、都城復帰は悲願となりました。

慶長元年（1596年）には、島津義弘に従って朝鮮に渡り、泗川の戦いなど各地を転戦しました。泗川の戦いでは、三久勢が敵の首を4,146討ち取ったと伝えられており、その武勇は広く知られました。

朝鮮から帰国後、島津氏と伊集院氏の間で庄内の乱が勃発しました。この乱は、北郷氏にとって都城復帰の好機となり、三久は島津忠恒に従い、長千代丸を補佐して伊集院忠真と戦いました。この戦いでの北郷氏の活躍に対し、忠恒は感状を送っています。

乱は徳川家康の仲介により終結し、伊集院氏は頴娃へと移され、北郷氏は念願の都城復帰を果たしました。しかし、三久自身は都城に戻ることなく、平佐を領し続け、元和6年（1620年）に48歳で死去しました。墓は薩摩川内市の梁月寺跡に現存しています。

平佐北郷氏

後に、都城の北郷氏宗家は島津氏の命により島津姓に復しましたが、平佐北郷氏は北郷の家名を保ち、島津氏の重臣として存続しました。

税所敦朝の殉教

三久の家臣であった税所敦朝は、キリスト教禁止後に洗礼を受けたため、三久は敦朝に棄教を命じましたが、敦朝はこれに従わず処刑され、薩摩国初の殉教者となりました。

参考文献

『都城市史』
『本藩人物誌 鹿児島県史料集第13集』（1973年 鹿児島県立図書館）

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