北郷相久

北郷相久（ほんごうすけひさ）

北郷相久は、戦国時代の武将であり、日向国（現在の宮崎県）の有力な国人領主であった北郷氏の10代当主・北郷時久の嫡男として、天文23年（1554年）に生まれました。幼名は次郎、官位は常陸介を称しました。母は不明ですが、弟に11代当主となる北郷忠虎がいます。また、相久は島津義弘の娘である御屋地を妻に迎え、北郷氏の将来を担う人物として期待されていました。

武将としての活躍

相久は、父・時久に従い、武将として数々の戦に従軍しました。天正元年（1573年）には、日向国で勢力を誇った肝付氏との戦いで武功を挙げ、天正6年（1578年）の耳川の戦いにも参戦し、島津氏の勝利に貢献しました。これらの戦功から、相久は北郷氏の後継者としての地位を確固たるものとしていました。

悲劇的な最期

しかし、天正9年（1581年）、相久は父・時久と不和になり、廃嫡されるという悲劇に見舞われます。そして、居城であった安永金石城（現在の宮崎県都城市庄内町）で切腹し、命を絶ちました。享年は20代後半と推測されます。一説には、切腹した年は天正7年（1579年）とも言われています。

父との不和の原因は明確ではありません。しかし、都城島津氏の記録である「庄内地理誌」によると、相久が戦場において卑怯な振る舞いをした家臣を諫めたところ、その家臣に逆恨みされ、当主となった場合に自分の立場が悪くなると考えた家臣が、相久に謀反の企てがあると時久に讒言したとされています。時久はこれを信じ、相久の居城である安永金石城を兵で包囲しました。相久は無実を主張しましたが、父に弓を引くことを潔しとせず、自害したと伝えられています。

相久の死を悼み、乳母であった乙守氏は、自らの両乳房を切り取り、相久に捧げて殉死したとされています。相久の法名は常徳院殿了山等玄大禅定門で、墓は都城市の竜泉寺跡に現存しています。

その後の北郷氏

相久の妻であった御屋地は、安永金石城が包囲される前に脱出し、父・島津義弘の元に帰されました。その後、豊州島津家の島津朝久と再婚しました。

相久の死後、父・時久は相久の無実を知り、深く後悔したとされています。時久は、相久の御霊を鎮めるため、若宮八幡として祀る神社を建立しました。この神社は、後に兼喜神社と改称され、現在も都城市に存在しています。

また、相久の弟であり、後に平佐（鹿児島県薩摩川内市平佐町）を領有した北郷三久も、兄の霊を鎮めるために、領内に兼喜神社を勧請し、崇拝しました。平佐の兼喜神社は、都城の兼喜神社から勧請されたもので、相久と父・時久、そして歴代の平佐北郷家領主の祖霊を祀っています。平佐の兼喜神社は、第13代当主である久信によって嘉永7年（1854年）に再興され、昭和59年（1984年）には平佐共有者によって修復されました。境内には、神殿と拝殿があり、多彩な彫刻が施されています。例祭は毎年9月30日に行われ、祭典後には馬場において流鏑馬が行われていたと伝えられています。

参考文献

『都城市史』
『本藩人物誌 鹿児島県史料集第13集』（1973年 鹿児島県立図書館）

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