肝付氏

肝付氏の歴史と系譜

肝付氏は、日本の氏族の一つで、戦国時代には大隅地方の戦国大名として、隣接する島津氏と激しい勢力争いを繰り広げました。しかし、最終的には島津氏の家臣となり、江戸時代には薩摩藩士として存続しました。また、明治維新後には、庶流から華族に列せられた人物もいます。

起源と発展

肝付氏の本姓は伴氏であり、平安時代に遡ります。伴兼行が薩摩掾に任命されて下向したことが、肝付氏の始まりとされています。兼行の子孫である兼貞が大隅国肝属郡の弁済使となり、その子兼俊の代に郡名を採って肝付を名乗るようになりました。1036年には肝付氏が同地に居住していた記録があります。

南北朝時代から戦国時代へ

南北朝時代には南朝方に属し、北朝方と戦いましたが、争乱が一段落すると島津氏に服属しました。しかし、戦国時代に入ると、領土問題を巡って島津氏と対立するようになります。16代当主肝付兼続は名将で、竹原山の戦いで島津忠将を討ち取るなど、一時的に島津氏を圧倒しました。しかし、1566年に島津軍の反攻に遭い、兼続は自害（異説あり）し、肝付氏は急速に衰退しました。

18代当主肝付兼亮は父の仇を討とうと島津氏に反抗しましたが、親島津派の家臣や義母に反対され、当主の座を追われてしまいます。19代当主となった肝付兼護は、1574年に島津氏に臣従し、家名こそ存続できたものの、1581年には領地を没収され、島津氏の一家臣となりました。これにより、大名としての肝付氏は滅亡しました。

江戸時代以降

関ヶ原の戦いで兼護が討ち死にした後、その子孫は島津氏の家臣として存続しました。庶流は早くから島津氏に仕え、重用されました。江戸時代には喜入領主として、また一所持として存続し、小松清廉（小松帯刀）などの著名な人物を輩出しています。その他、多くの庶流が薩摩藩士や佐土原藩士として活躍しました。

近代

庶流の肝付兼行は、近代に海軍中将まで昇進した海軍軍人であり、日露戦争での功績により男爵に叙せられました。肝付氏の中で華族に列したのは同家のみです。兼行は後に大阪市長や貴族院議員も務めました。彼の息子である兼英も貴族院議員を務めました。また、声優の肝付兼太（本名：肝付兼正）も、肝付氏庶流の末裔です。

歴代当主

肝付氏の主な歴代当主は以下の通りです。

肝付兼俊
肝付兼経
肝付兼益
肝付兼員
肝付兼石
肝付兼藤
肝付兼尚
肝付兼重
肝付秋兼
肝付兼氏
肝付兼元
肝付兼忠
肝付兼連
肝付兼久
肝付兼興
肝付兼続
肝付良兼
肝付兼亮
肝付兼護
肝付兼幸
肝付兼康
肝付兼親
肝付年兼
肝付経験
肝付治兼
肝付兼群
肝付兼命
肝付兼明
肝付兼施
肝付兼寛
肝付兼亮
肝付兼冬
肝付兼遠

肝付氏の庶流

肝付氏の主な庶流には以下の家系があります。

肝付兼光
肝付兼固
肝付兼演
肝付兼盛
肝付兼行
肝付兼善
肝付兼太
肝付兼美

関連諸家

肝付氏に関連する主な家系には、北原氏、薬丸氏、安楽氏、梅北氏、頴娃氏、荻原氏、伊地知氏、禰寝氏（後の小松氏）などがあります。

まとめ

肝付氏は、平安時代から戦国時代にかけて大隅地方で勢力を誇った氏族です。戦国時代には島津氏と激しく争いましたが、最終的には島津氏の家臣となり、江戸時代には薩摩藩士として存続しました。明治時代には、庶流から華族に列せられた人物も現れました。肝付氏は、日本の歴史において重要な役割を果たした氏族の一つと言えるでしょう。

参考資料

太田亮『姓氏家系大辞典』
武家家伝『肝付氏』
霞会館華族家系大成編輯委員会『平成新修旧[[華族家系大成]] 上巻』
小田部雄次『華族 近代日本貴族の虚像と実像』
松田敬之『〈華族爵位〉請願人名辞典』

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