北郷資忠

北郷資忠（ほんごう すけただ）

生涯

北郷資忠は、南北朝時代に活躍した武将で、薩摩及び日向（現在の鹿児島県と宮崎県）を拠点とした島津氏の有力な一族、北郷氏の初代当主です。彼は、島津宗家4代当主である島津忠宗の六男として生まれました。島津忠宗には7人の男子がおり、それぞれが分家を興し、「七人島津」と呼ばれました。当時の分家は、将軍家や幕府との直接的な関係を重視し、島津宗家との間に身分の上下はないという考えを持っていました。

資忠の正確な生年は不明ですが、建武3年（1336年）には、島津氏の大隅国加瀬田城攻めに搦手大将として従軍した記録が残っています。その後も島津氏の一員として各地を転戦し、武功を重ねました。観応2年（1351年）には、足利氏に従い北朝方の武将として南朝方と戦い、その功績が認められ、足利尊氏または義詮から、薩摩迫一帯（現在の宮崎県都城市山田町古江）の庄内北郷の地300町を与えられました。文和元年（1352年）には、その地に館を構え、郷名を取って北郷氏を称しました。

また、資忠は在地土豪の宮丸氏と姻戚関係を結び、その所領を継承することで北郷氏の基盤を築きました。一時的に南九州で南朝方が優勢になった際には、島津宗家が南朝方に転じ、北郷氏もそれに従いましたが、後に足利氏によって北郷は肥後球磨の相良氏に与えられました。しかし、その後まもなく島津宗家とともに北朝方に復帰しています。

北郷資忠を祀る神社

安永諏訪神社

都城市庄内町にある安永諏訪神社は、文和4年（1355年）に資忠が創建したと伝えられています。資忠が北郷入部前に、常日頃から崇敬していた薩摩の諏訪神社に参詣した際、社頭から一本の鎌が飛んできて資忠の直衣の袖に入ったという逸話が残っています。この出来事を神意と感じた資忠は、その鎌を奉じ、家臣の石川氏を祠官として庄内安永の地に諏訪神社を勧請し、武運長久の祈願所としました。この由来は、都城の諏訪神社が鹿児島の諏訪神社の分神であることを示しています。また、鎌が袖に入ったという出来事は、農民にとって大切な農具である鎌を、資忠が手中に収めた、つまりこの地の人々を治めたという象徴的な意味合いを持つとも解釈されています。

安永諏訪神社は、歴代の領主から篤く崇敬されてきました。応安5年（1372年）には、社殿再興の際に上諏訪大明神・下諏訪大明神と記された樟板が奉納され、天文年間には8代領主忠相が神馬を奉献、10代領主時久、19代領主島津久龍も社を再興しました。近代に入っても、明治20年（1887年）に島津久家から金銭の寄進があり、今日に至るまで領主たちからの崇敬が続いていることがわかります。

祭礼も盛大に行われており、江戸時代までは旧暦7月28日に「諏訪祭礼」が実施されていました。この祭りは領主主導で行われ、準備には領内のあらゆる身分の人々が携わっていました。祭礼当日には、領主が総勢約260人の行列を率いて神社に参詣し、社頭では舞楽、門農民による相撲、流鏑馬、あげ馬などが奉納されました。都城では、領主の参拝といえば安永諏訪神社のことを指し、都城の鎮守としての役割を果たしていました。

豊幡神社

都城市庄内町にある豊幡神社は、北郷資忠を祭神として祀っています。神社の一角にある菩提寺山久院跡には、石垣に囲まれた資忠とその妻の墓が現存し、都城市の文化財に指定されています。妻の法名は柏庭妙意大姉です。

参考文献

『都城市史』
『高城町史』
瀬戸山計佐儀『都城島津家歴代史　全』三州文化社、1992年
『都城盆地 史跡ガイドブック ①旧都城市編』南九州文化研究会、2014年

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