千葉秀胤

千葉秀胤（ちば ひでたね）：鎌倉時代の武将、波乱の生涯

千葉秀胤は、鎌倉時代前期から中期にかけて活躍した御家人であり、上総千葉氏の二代目当主です。父は千葉常秀で、常秀は分家して境を称したため、秀胤は「境兵衛次郎」とも呼ばれました。また、「境秀胤」や「上総秀胤」と呼ばれることもあります。

生涯

仁治元年（1240年）、秀胤は従五位下上総権介に任ぜられ、将軍・九条頼経の二所参詣に供奉しました。その後、寛元元年（1243年）には従五位上に叙せられ、翌年には評定衆に加えられるなど、幕府内での地位を確立しました。しかし、その後の政変により、彼の運命は大きく翻弄されることになります。

秀胤は幼少の千葉氏宗家当主・千葉亀若丸を補佐する一方で、一族の代表者として対外的な活動も行っていました。名越光時、藤原定員らと共に九条頼経を擁立し、執権北条経時に対抗する動きを見せます。しかし、寛元4年（1246年）に経時が死去し、弟の時頼が執権を継承すると、状況は一変します。

時頼の執権就任を機に勃発した宮騒動によって、名越光時や藤原定員が失脚。秀胤もその余波を受け、評定衆を更迭された上、下総の所領を没収され、上総国に放逐されました。上総は秀胤の本国であったため、この処分は比較的寛大であったとも考えられますが、これは時頼が事態の早期収束を図った結果と見られています。

宝治元年（1247年）6月、宝治合戦が勃発。三浦泰村・光村兄弟が滅ぼされると、秀胤にも追討命令が下されます。6月7日には、千葉氏一族の大須賀胤氏や東胤行らが、秀胤の本拠地である上総国玉崎荘大柳館を攻撃。追い詰められた秀胤は、屋敷に火を放ち、4人の息子を含む一族郎党163名と共に自害しました。この事件は、上総千葉氏の滅亡を意味するものでした。

秀胤の自害に際しては、かつて兄である秀胤に所領を奪われ不仲であった弟の時常も駆けつけ、共に自害したという逸話が残っています。この出来事は「勇士の美談」として語り継がれています。また、東胤行が戦功と引き換えに、秀胤の孫（泰秀の息子）の助命を求めたため、幼い子供たちは助命されました。しかし、この結果、上総千葉氏は滅亡という結末を迎えることになったのです。

まとめ

千葉秀胤は、鎌倉時代中期に生きた武将であり、激動の時代の中で翻弄された人物でした。一時は幕府内で重きをなしたものの、政変によって失脚、最後は一族と共に自害するという壮絶な最期を遂げました。彼の生涯は、当時の武士の生き様を象徴するものであり、歴史に深く刻まれています。

参考文献

岡田清一 著「上総秀胤」、安田元久 編『鎌倉・室町人名事典』（コンパクト）新人物往来社、1990年。
岡田清一「上総秀胤」『国史大辞典』 9巻、吉川弘文館、1988年。
青山幹哉「上総秀胤」『日本史大事典』 4巻、新人物往来社、2007年。
細川重男『宝治合戦　北条得宗家と三浦一族の最終戦争』朝日新聞出版〈朝日新書 876〉、2022年。

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