千葉常秀

千葉常秀：鎌倉時代を駆け抜けた武将

千葉常秀（ちば つねひで）は、鎌倉時代前期に活躍した武将で、鎌倉幕府の御家人です。千葉胤正の子として生まれ、兄に千葉成胤がいます。通称は境平次（さかい へいじ）で、境常秀、または上総常秀とも呼ばれることもあります。

生涯

常秀は、千葉氏から分家して「境」を名乗りました。この「境」という名は、千葉氏の本拠地である千葉荘の外れ、境川（現在の村田川）流域に拠点を置いたことに由来するとされています。その後、常秀は下総国垣生荘や上総国玉崎荘などを支配し、玉崎荘の大柳館（現在の千葉県睦沢町）を拠点としました。さらに、千葉荘と境川を挟んだ上総国市原郡にも勢力を拡大していきました。

元暦元年（1184年）、常秀は祖父である千葉常胤と共に、源範頼の平氏追討軍に参加し、周防や豊後を転戦しました。また、文治5年（1189年）の奥州合戦にも祖父と共に従軍し、多賀城に入っています。これらの戦功が認められ、常秀は幕府内での地位を確立していきます。

建久元年（1190年）には、源頼朝の上洛に祖父常胤らと共に随行しました。この際、常胤が頼朝から功績を認められ、その推挙により、常秀は左兵衛尉に任ぜられました。さらに、5年後の頼朝の上洛にも随行し、東大寺の大仏殿落成供養に参列しています。正治2年（1200年）には、源頼家に供奉して鶴岡八幡宮に参詣しました。

建仁3年（1203年）には、源親広と共に鎌倉中寺社奉行に任ぜられました。これは鎌倉の寺社を統括する重要な役職であり、常秀の行政手腕を示すものです。元久2年（1205年）の畠山重忠の乱では、北条義時に従って後陣に詰めています。

承久元年（1219年）には、源実朝の右大臣就任に伴う鶴岡八幡宮拝賀に供奉しましたが、その際、実朝暗殺事件に遭遇しました。嘉禄元年（1225年）には、小山朝政と共に従五位下下総守に任ぜられ、後に上総介に転任しました。嘉禎元年（1235年）の明王院の供養に際しては、九条頼経に供奉しています。

常秀は、兄である成胤よりも高い官位を得て、千葉介（下総介）の上官である下総守、更には親王任国である上総国衙の最高位である上総介にまで昇りつめ、宗家を凌ぐほどの地位を築きました。『千葉大系図』には、常秀が上総守護に補任されたと記されており、源頼朝に討たれた上総広常の子孫に代わって、上総氏の地位を継承したという見方もありますが、これを裏付ける確たる証拠はありません。

常秀の没年は不明ですが、嘉禎4年（1238年）から仁治2年（1241年）の間と推定されています。

参考文献

岡田清一「千葉常秀」（『鎌倉・室町人名事典』新人物往来社、1990年）ISBN 978-4-404-01757-4
千野原靖方『千葉氏 鎌倉・南北朝編』（崙書房出版、1995年）ISBN 978-4-8455-1015-3 第2章第1節
千葉県史料研究財団 編『千葉県の歴史 通史編 中世』（千葉県、2007年）第1編第1・2章
島崎直人「千葉常秀」（『日本中世内乱史人名事典 上巻』新人物往来社、2007年）ISBN 978-4-404-03449-6 第3章
細川重男『宝治合戦　北条得宗家と三浦一族の最終戦争』朝日新聞出版〈朝日新書 876〉、2022年8月30日。ISBN 978-4-02-295185-4

関連項目

境氏
* 房総平氏

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