南アフリカ航空228便墜落事故

1968年4月20日、南アフリカ航空228便が、南西アフリカ（現在のナミビア）で悲劇的な墜落事故を起こしました。この事故は、同国史上最悪の航空事故として記録されています。

事故の概要

南アフリカ航空228便は、ヤン・スマッツ国際空港（現：O・R・タンボ国際空港）からヒースロー空港へ向かう途中、経由地のウィンドフック・ホセア・クタコ国際空港を離陸直後に墜落しました。この事故により、乗員乗客128名のうち123名が命を落としました。事故機はボーイング707-344C（機体記号ZS-EUW）で、製造からわずか2ヶ月の新造機でした。総飛行時間は238時間と非常に短いものでした。

事故機と乗員

事故機のボーイング707-344Cは、製造番号19705/675として1968年に製造され、同年2月5日に初飛行を行いました。南アフリカ航空には2月23日に納入され、事故発生時は総飛行時間がわずか238時間の新造機でした。

乗員は、機長、副操縦士、航空機関士、航空士、そしてもう一人のパイロットの計5名でした。機長は総飛行時間18,102時間という豊富な経験を持っていましたが、ボーイング707-344Cでの飛行時間はわずか1時間でした。副操縦士の総飛行時間は4,109時間、ボーイング707での飛行時間は229時間でした。航空機関士は総飛行時間11,443時間、ボーイング707での飛行時間は2,688時間でした。さらに、26歳のパイロットも同乗しており、総飛行時間1,000時間、ボーイング707での飛行時間は79時間でした。

事故の経緯

228便は、ヤン・スマッツ国際空港からウィンドフック・ホセア・クタコ国際空港、さらにクアトロ・デ・フェベレイロ空港、グラン・カナリア空港、フランクフルト空港を経由してヒースロー空港へ向かう国際定期旅客便でした。ヤン・スマッツ国際空港からは70名の乗客が搭乗し、ウィンドフック・ホセア・クタコ国際空港でさらに46名が搭乗しました。GMT18時49分、228便はウィンドフックの滑走路08から離陸しました。事故当夜は新月で、周囲は暗闇に包まれていました。機体は650フィート（約200メートル）まで上昇し、水平飛行に移った直後、降下を開始しました。離陸から50秒後、機体は滑走路から5,327メートル離れた地点に時速約502キロで墜落しました。墜落時、機体はわずかに左に傾き、4基のエンジンが最初に地面に接触しました。衝撃で燃料が発火し、機体は炎に包まれました。

墜落現場は起伏の激しい場所だったため、救助隊の到着は40分後となりました。機体前方に着席していた9名の乗客が救助されましたが、後に4名が死亡し、最終的な死者数は123名となりました。

事故調査と原因

事故機にはコックピットボイスレコーダー（CVR）とフライトデータレコーダー（FDR）が搭載されていなかったため、事故調査は困難を極めました。これらの機器の搭載は1968年1月1日に義務化されましたが、南アフリカ航空は調達が間に合わず、事故機には未搭載でした。

調査の結果、エンジンには異常がなかったことが判明しました。最終報告書では、事故原因は以下の人的要因によるものと結論付けられました。

離陸は正常に行われ、高揚力装置は格納され、エンジンは上昇推力に設定されていた。
機長は、機体が降下しているにも関わらず、上昇していると錯覚していた可能性が高い。
副操縦士は、機体が降下していることを認識するのに十分な計器監視を行わなかった。

さらに、以下の要因が事故に寄与したとされました。

完全な暗闇の中で、機外の状況を目視で確認できない状態での離陸。
スタビライザートリムの不適切な操作。
空間識失調。

また、以下の要因が事故に寄与した可能性も指摘されました。

垂直速度インジケータの位置に関する一時的な混乱。パイロットはボーイング707の異なるモデル（モデルAとモデルB）での乗務に慣れていたが、事故機（モデルC）とは計器のレイアウトが異なっていた。
ドラム式高度計の読み取りミス。このタイプの高度計は1,000フィート（約300メートル）の読み間違いを起こしやすい。
バードストライクなどの小さな出来事による注意散漫。

この事故や他のCFIT（Controlled Flight Into Terrain：操縦可能な航空機が意図せず地形に衝突する事故）を受けて、アメリカ連邦航空局は対地接近警報装置（GPWS）がこれらの事故防止に有効であると判断しました。1972年2月には規則が改正され、全てのジェット機へのGPWS搭載が義務化されました。

関連項目

アメリカン航空383便事故

この事故は、航空安全における人的要因の重要性を示す教訓として、後世に語り継がれています。

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