南条氏の当主・一族一覧

伯耆南条氏の当主と一族

伯耆国（現在の鳥取県中部）を本拠とした国人領主、南条氏。その歴史を彩った歴代の当主たちや、系譜上に名を残す一族について解説します。ここでは、既に詳細な項目が立てられている人物を除き、主要な人物の事績や伝承を紹介します。

南条氏歴代当主

2代当主 景宗（かげむね）
南条氏の2代目当主。官位は宮内少輔を務めました。明徳2年（1391年）に家督を継承し、当主となります。『伯耆民談記』には、父である初代貞宗に劣らない武勇の持ち主であったと伝えられています。応永15年（1395年）には、本拠地である羽衣石（うえし）に景宗寺を建立しました。永享10年（1438年）に75歳でその生涯を終えています。

3代～5代当主
南条氏の3代から5代にかけての当主については、同時代の文献が非常に少ないため、残念ながら実名が確認されていません。この時代の当主について、1999年に発行された『南條氏盛衰記』は、3代を教之（のりゆき）、4代を元之（もとゆき）、5代を政之（まさゆき）とし、それぞれの業績を記しています。しかし、これらの人物は伯耆の守護であった山名氏であるとする説が現在ではより有力視されています。

6代当主 宗貞（むねさだ）／賢（かた）
官位は但馬守でした。『伯耆民談記』によると、守護である山名氏の指示を受けて南条氏の家運が栄えたとされています。永正2年（1505年）、家督を嫡男の宗皓（むねはる）に譲った後、宗皓と共に当時の将軍足利義稙（あしかがよしたね）が上洛する際に、その先鋒部隊に加わって参陣しました。

7代当主 宗皓（むねはる）
官位は越前守。8代当主宗勝（むねかつ）や元信（もとのぶ）の父にあたります。父宗貞と共に将軍の上洛に際して先鋒を務め、京都での戦において戦功を挙げたと『伯耆民談記』に記されています。この頃から、南条氏は「伯耆衆」と呼ばれる伯耆国内の有力な国人勢力の一つとして存在感を高め、勢力を拡大していきます。この時代の活動が、その後の南条氏の発展の基礎を築いたと言えるでしょう。永正11年（1514年）、46歳で死去しました。

南条氏を巡る人々

南条氏の系譜や関連する人々についても、複数の記録が残されています。

尼子右衛門尉経時（あまごえもんのじょうつねとき）
南条氏の初代当主である貞宗（さだむね）の三男とされる人物です。東京大学史料編纂所が所蔵する『羽衣石南条系図』にその名が記されています。系図には「雲州尼子經久此末葉也」という記述がある以外、詳細は不明です。ちなみに、父貞宗が当初「尼子南条伯耆守」と名乗っていたとする説もあり、尼子氏と南条氏の間に何らかの血縁関係があった可能性も指摘されています。

南条下総入道（なんじょうしもふさいにゅうどう）
歴史書『大日本史料』にその名が見える人物です。応仁の乱の頃、伯耆国で守護の山名政之（まさゆき）に対して、山名兵部少輔元之（もとゆき）とその弟小太郎が起こした反乱に参加しました。文明13年（1481年）8月30日の戦いで戦死したと記録されています。この年代は5代当主の頃にあたるため、南条一族の一員であることはほぼ間違いないと考えられていますが、それ以上の詳しい情報は分かっていません。『大日本史料』の文明13年9月12日付の記述には、「政之（山名）が馳せ向かい合戦に及び、数ヶ所の城が同28日晦日に没落した。同日、南条下総入道は討ち取られ、元之らは作州（美作国）へ落ち延びた」といった内容が見えます。（参考：岡村吉彦氏論文）

千代姫（ちよひめ）
戦国期最後の当主、南条元続（もとつぐ）の長女です。南条元忠（もとただ）は彼女の弟にあたります。南条氏が関ヶ原の戦いで西軍に加わって敗れ、領地を没収された後、千代姫は家臣たちと共に因幡国気多郡（現在の鳥取市鹿野町周辺）の鹿野へ逃れました。その地で農業に従事し、慶長19年（1614年）7月23日に40歳前後で亡くなったと伝えられています。『南條氏盛衰記』によると、鳥取市鹿野町広木には千代姫のものとされる墓があり、その周囲を家臣たちの墓が囲むように並んでいます。

南条彌太郎兼保（なんじょうやたろうかねやす）
南条元続の長男とされています。『南条氏系図』では夭折したとされていますが、『南條氏盛衰記』には異なる説が記されています。それによると、元亀元年（1570年）に生まれた兼保を、毛利氏に人質として取られるのを避けるため、父元続が家臣と共に伊予国（現在の愛媛県）朝倉村に隠したとされています。兼保はその後、その地の霊仙山城主である中川山城守（やましろのかみ）のもとで客将として迎えられ、慶長18年（1613年）3月15日に亡くなったとされます。

南条宗続（なんじょうむねつぐ）
南条元続の三男です。一族の一部と共に大坂城に入城しましたが、大坂の陣で落城した後、但馬国豊岡（現在の兵庫県豊岡市）へ逃れました。昭和6年（1931年）に私財を投じて羽衣石城の模擬天守を建設した南条寅之助（とらのすけ）は、この宗続の子孫にあたるとされています。

南条宗鑑（なんじょうそうかん）
戦国時代に活躍した婦人科医です。伯耆国の出身で、「一鷗軒（いちおうけん）」と号しました。京都で医学を学んだ後、一度伯耆に戻って開業しましたが、再び京都へ出て婦人科を開業し、名医として知られるようになります。天正3年（1575年）には、それまでの経験や独自の知見を加えて、日本で最初の婦人科医書とされる『撰集婦人方（せんじゅうふじんほう）』を著しました。彼の息子、宗虎（そうこ）もまた医師でした。伯耆出身であることや、この時代まで南条氏が一族の通し字として「宗」を使用していたことから、『東郷町誌』では宗鑑が南条一族である可能性が高いと指摘しています。

南条宗信（なんじょうむねのぶ）
7代当主南条宗皓の四男です。通称は與兵衛（よへえ）ですが、詳しい経歴は明らかになっていません。天正8年（1580年）12月に亡くなりました。戒名は花翁宗心大居士（かおうそうしんだいこじ）です。彼の死後、南条信正（のぶまさ）の子である信光（のぶみつ）が「與兵衛」の名跡を継いでいます。

これらの人物から、伯耆南条氏が戦国期の混乱期において、当主や一族が様々な形で歴史に関わり、あるいはその翻弄の中で独自の道を歩んだ様子がうかがえます。

参考文献：『東郷町誌』、松岡布政原著・音田忠男訳『伯耆民談記』、南條氏顕彰会『南條氏盛衰記』、鳥取県教育委員会『鳥取県中世城館分布調査報告書第2集（伯耆編）』など。（南条下総入道の項で言及した岡村吉彦氏の論文は、『鳥取県中世城館分布調査報告書』に掲載されています）

もう一度検索