南極環流

南極周極流

南極周極流（南極環流）は、南極大陸を取り囲むように流れる東向きの海流であり、別名で西風海流や環南極海流とも称されます。これらの海流は、地球上でも最大の規模を誇っており、流速は平均して20cm/s、流幅は広く、厚さは3000m以上にも達します。

この海流は約3300万年前、新生代古第三紀に、南極大陸と南アメリカ大陸、そしてオーストラリア大陸が分かれた結果形成されました。これにより、南極周辺に海が成立し、地球の自転の影響が流れを生む要因となっています。南極周極流は、赤道からの暖流を遮断し、南極大陸を急速に氷の大陸へと導く役割も果たしました。

構造

南極周極流の流路は海底の地形や海陸の分布に影響され、さまざまに変化します。特に大西洋中央海嶺の南端やインド洋のケルゲレン海台、東太平洋海嶺の末端などでは、流れが北に曲がることが観察されます。これらの場所を越えると、流れは南側へまた曲がります。これにより、海洋渦が形成され、流体の交換が活発に行われるホットスポットとなります。

南極周極流にはいくつかの主要な海洋フロントが存在し、これらは主に亜熱帯付近のSubantarctic Front (SAF)、中心付近のPolar Front (PF)、亜寒帯付近のSouthern ACC Front (SACCF)と呼ばれています。さらに、南極周極流の南限としてSouthern Boundary (SB)が示され、これが上部子午面循環の南限に相当します。

また、南極周極流の南側には、南極斜面流があり、これが南極周極流と協調して時計回りの亜寒帯循環を形成しています。

気候学的な役割

気候において、南極周極流は太平洋、大西洋、インド洋といった大洋間の熱や物質の再分配に重要な役割を果たしています。この流れは、西オーストラリアやペルー、フォークランド、ブラジルなどの海流とともに、異なる水塊の交換を促進します。

底層では、南極周辺の海氷から生成される南極底層水が低緯度側へと運ばれ、逆に中深層では北大西洋から沈み込んだ北大西洋深層水が高緯度へと移動します。この流れのメカニズムは、全球の海洋深層循環（熱塩循環）の中心的な要素となっており、地球の熱と炭素の循環について考察する際に欠かせません。

また、南極周極流によって運ばれる周極深層水は、周辺の気候に大きな影響を与えています。最も高温・高塩分の水塊であるこの水が南極の大陸棚に進入すると、棚氷の融解が促進され、これが南極の氷床の減少につながります。

地球温暖化に伴う偏西風の強化が予測される中、これにより周極深層水の輸送が強化される可能性が指摘されています。これは、氷床の融解をさらに加速させる要因となり得るため、今後の気候変動において注視するべき問題です。

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