南阿蘇鉄道高森線

高森線：阿蘇の自然と復興の軌跡を辿るローカル線

高森線は、熊本県阿蘇郡南阿蘇村の立野駅から高森町の高森駅までを結ぶ、南阿蘇鉄道が運営する鉄道路線です。かつては国鉄の特定地方交通線でしたが、第三セクターに転換され、現在に至ります。全長17.7kmの短い路線ながら、雄大な阿蘇の自然と、幾多の困難を乗り越えてきた歴史が凝縮されています。

阿蘇の絶景と歴史的建造物

高森線は、阿蘇五岳と外輪山に挟まれた南郷谷を白川に沿って東進します。車窓からは、阿蘇の雄大な自然を満喫できます。

特に印象的なのが、立野駅と長陽駅間の立野橋梁と第一白川橋梁です。立野橋梁は、九州では珍しいトレッスル橋で、かつては日本最長の鉄道用トレッスル橋として知られていました。第一白川橋梁は、完成当時、水面からの高さが日本一を誇り、現在でも日本有数の高さの鉄道橋としてその存在感を示しています。これらの橋梁は、1953年の熊本大水害でも甚大な被害を受けましたが、その後修復され、現在も安全に運行されています。第一白川橋梁では、乗客サービスとして、運転士による徐行運転が行われることがあります。

また、高森線には、かつて日本一長い駅名として知られていた「南阿蘇水の生まれる里白水高原駅」がありました。他にも特徴的な駅名を持つ駅が存在します。

高森駅周辺には、かつて高森線と高千穂線を繋ぐ計画で建設された高森トンネルがあります。異常出水により工事が中断された後、現在は「高森湧水トンネル公園」として保存されています。

2016年熊本地震からの復興

2016年4月の熊本地震により、高森線は全線で不通となりました。特に立野駅 - 長陽駅間は、橋梁やトンネルに大きな被害を受けました。復旧には、5年もの歳月と、多額の費用が必要とされました。

国土交通省の調査によると、復旧工事には約65～70億円、5年の期間がかかると見込まれていました。しかし、関係者や地域住民の懸命な努力により、2019年には2023年夏の全線復旧を目指す方針が示されました。

さらに、高森線の活性化策として、立野駅からのJR豊肥本線への乗り入れ計画が浮上しました。この計画は、沿線自治体やJR九州の協力のもと実現し、2023年7月、全線復旧と同時に、肥後大津駅への直通運転が開始されました。この直通運転により、熊本空港からのアクセスも向上し、観光客の増加が見込まれています。

運行形態

全線復旧後、高森線は1日11往復の普通列車が運行されています。そのうち2往復は、豊肥本線肥後大津駅まで直通運転されます。また、観光客向けとして、トロッコ列車「ゆうすげ号」が土日祝日を中心に運行されています。

歴史

高森線は、豊肥本線の支線として1928年に開業しました。当初は、高千穂を経て延岡まで延伸する計画がありましたが、高森 - 高千穂間のトンネル掘削中の異常出水事故により計画は中断されました。この計画の一部は、高千穂鉄道高千穂線として実現しています。

1981年には特定地方交通線として廃止が承認されましたが、第三セクターである南阿蘇鉄道に転換され、現在も運行されています。

まとめ

高森線は、阿蘇の壮大な自然と、熊本地震からの復興を象徴する路線です。美しい景観と歴史的建造物、そして地域の努力によって復活した鉄道の物語は、多くの人の心を掴みます。今後も、地域の活性化に貢献する存在として、その役割を果たしていくでしょう。

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