南陽郡 (朝鮮)

南陽郡：激動の歴史を刻んだ京畿道の行政区域

南陽郡は、現在の京畿道華城市西部（南陽邑など）や安山市大阜洞、仁川広域市甕津郡霊興面一帯にまたがる地域を管轄していた、かつて存在した行政区域です。日本統治時代の1914年に行われた行政区域改編により、水原郡と合併。同時に、島であった大阜洞と霊興面は富川郡に編入されました。南陽郡は寧堤（ヨンジェ）や戈浦（クワポ）という別名でも知られています。

古代からの歴史：交易の要衝、党項城

古くは唐恩郡（タンウンぐん）や唐城郡（タンソンぐん）と呼ばれていました。この地には、百済と新羅が中国との交易で優位を占めようと激しく争奪戦を繰り広げた、華城唐城（別名：党項城）が存在していました。この党項城は、百済と新羅が中国との交易（朝貢）において優位に立ちたいとしのぎを削った場所であり、その歴史的意義は非常に大きいです。また、雨汀邑と長安面一帯は三帰（または三槐）と呼ばれ、高麗時代には双阜県という名称でした。

三国時代から朝鮮時代：勢力争いの舞台

三韓時代には馬韓の爰襄国、後の双阜県の地域は桑外国であったと推定されています。三国時代初期には百済の領土となり、唐城と呼ばれるようになりましたが、高句麗の長寿王の時代には一時高句麗に占領される時期もありました。百済聖王の治世に一時的に百済の支配下に戻ったものの、新羅の真興王によって奪取され、以降は党項城と呼ばれるようになりました。

757年（景徳王16年）の行政制度改編により唐恩郡と改称され、車城県と振威県の2県を管轄しました。その後も、829年（興徳王4年）には唐城鎮が設置され、高麗時代には双阜県と呼ばれるようになりました。1018年（顕宗9年）には水州（水原）に属郡として編入されたのち、再び弥鄒忽（仁川）に編入されるなど、その所属は変遷を繰り返しました。

1172年（明宗2年）には監務が設置され、1271年（元宗12年）にはモンゴル帝国が大阜島を侵略するも、住民たちの蜂起によって撃退されました。1290年（忠烈王16年）には洪茶丘の故郷として益州に昇格し、知益州事が派遣されました。その後、江寧都護府や益州牧が設置されましたが、1310年（忠宣王2年）には全国の牧が廃止され、南陽府となりました。1413年（太宗13年）には南陽都護府として再昇格したものの、その後は県への降格と都護府への昇格を繰り返すなど、不安定な時期が続きました。

1895年（陰暦5月1日）の二十三府制の行政区域改編により郡として再編され、仁川府南陽郡となりました。翌1896年8月4日には京畿道南陽郡に改編され、1906年9月24日には水原郡および仁川府からいくつかの面を編入しました。そして、1914年4月1日、大阜面と霊興面が富川郡に編入され、残りの地域は水原郡と統合され、南陽郡は消滅しました。1914年以降の歴史については、富川郡と水原郡を参照する必要があります。

行政区画

南陽郡は、多くの面（行政区域）から構成されていました。陰德里面、禾尺只面、屯知串面、分郷里面、双守里面、麻道面、松山面、水山面、細串面、西如堤面、新里面、旀知串面、楮八里面、八灘面、長安面、草長面、雨井面、鴨汀面、大阜面、霊興面など、多くの面が郡を構成していました。それぞれの面には、さらに多くの洞（行政区域）が存在していました。

現代へのつながり

現代においても、南陽という地名は現代自動車の南陽R&Dセンター（華城市）の名称にも残っており、その歴史的重みを物語っています。このセンターの名称は、ニュルブルクリンクと並んで有名です。

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