単性説

単性説（Monophysitism）

単性説は、キリスト論において、受肉したイエス・キリストが単独の本性しか持たないとする考え方です。この学説では、神聖と人間性の融合を主張する一方で、両性の存在を否定することから、その名称はギリシャ語の「mono」（一つ）と「physis」（本性）から由来しています。一般には、カルケドン公会議にて採択された二つの本性（神性と人性）の併存という意見に対立する形で存在しています。

歴史的背景

単性説は、4世紀にエジプトで主にネストリウス派に対抗する形で発展しましたが、最終的にはカルケドン公会議で否定されました。この公会議は451年に開催され、イエス・キリストが神性と人性の二つを有することが正式に確認された場でした。単性説自体も、その後さまざまな形に変化し、特にエウテュケスやその後の一性論（合性論）へと派生していきました。

エウテュケスとその思想

エウテュケス（378年頃–453年頃）は、この単性論を代表する人物と見なされ、彼の考え方は「エウテュケス主義」として知られています。この見解によると、受肉後のイエス・キリストの人性は神性に吸収され、結果として単一の本性が形成されるとされています。これと関連して、一性論も見られますが、これは非カルケドン派によるキリスト論の一つで、神性と人性が融合した一つの本性を持つとしています。

初期教会の論争

ローマ教皇レオ1世は、エウテュケス主義に反対し、コンスタンディヌーポリ総主教フラウィアヌスに向けた書簡を通じてその立場を明確にしました。彼はイエス・キリストが一つの位格に二つの本性、神性と人性を有していると説きました。これらの本性は互いに融合せず、それぞれ独自の作用を持ちながらも、一つの位格の中で永遠に結びついているとしたのです。

449年、エフェソスで開かれた公会議では、上記の考えが否定され、主にローマ教皇派が排除される結果となりました。そこでは、フラウィアヌスが虐待を受け、不幸にも後に亡くなる事態が起きました。他方、教皇によるこの公会議の無効宣言は、後のカルケドン公会議に繋がり、最終的にエウテュケスの見解は異端とされました。

非カルケドン派の形成

タイ教会においては、シリア正教会、コプト正教会、アルメニア使徒教会、エチオピア正教会などが単性論をベースとする教団と見做されることがあります。しかしながら、これらの教団はエウテュケス主義のみを単性論として扱い、自身の立場を単性論とは異なるものと主張しており、カルケドン公会議を否定する歴史的背景を持つため、非カルケドン派と呼ばれています。

まとめ

単性説はキリスト教の神秘における重要な論点であり、その歴史的経緯や教義に関する議論は、多くの側面から展開されています。今日でも、非カルケドン派の教会は自己の教義を守り続け、カトリックや正教会との関係を複雑にしています。このため、キリスト教の教義に関する理解を深めるためには、単性説への理解が不可欠であると言えるでしょう。

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