シリア正教会

シリア正教会の概要

シリア正教会は、東方諸教会、またはオリエンタル・オーソドックス教会に分類されるキリスト教の教派の一つです。6世紀にシリアで成立し、シリア、メソポタミアを中心に発展しました。インドにも教区が存在し、近年では海外への移民を通じて欧米にも教会が設立されています。

シリア正教会は、正式名称である一方、「ヤコブ教会」または「ヤコブ派」とも呼ばれることがあります。これは、6世紀のエデッサの主教ヤコブス・バラダイオスに由来しますが、シリア正教会自身はこの呼称を、教会が彼の創始によるという誤解を招くとして、避ける傾向にあります。

教義と歴史的背景

シリア正教会は、キリスト単性論派と見なされることがありますが、自身は合性論を主張しています。この教義は、451年のカルケドン公会議で単性論が異端とされた際に、カルケドン派（東方正教会）と分離するに至った教会の教えに由来します。

カルケドン公会議は、キリストの神性と人性の両方を認める二性説を正統としましたが、シリア正教会は、キリストの神性と人性が結合して一つの性質となったという合性論を支持しました。そのため、非カルケドン派正教会と呼ぶ方が中立的であるとされています。シリア正教会は、自らの教義を単性論とは異なるものと捉えており、単性論という言葉をエウテュケスの説に帰属させています。

呼称に関する考察

シリア正教会は、「ヤコブ派」という呼称を、教会の連続性と正統性を損なうものとして不当としています。ヤコブス・バラダイオスは教会の重要な人物でありましたが、彼を創始者と見なすことは教会の歴史を歪曲すると考えています。シリア正教会は、初代教会からの連続性を強調しています。

現状

シリア正教会は、名目上の総主教座をアンティオキアに置いていますが、現在の実際の所在地はダマスカスです。アンティオキアには、カルケドン派である東方正教会の総主教庁も存在し、両者は並立した状態となっています。

シリア正教会は、ニカイア信条とニカイア・コンスタンティノポリス信条を告白しており、教義を共有するコプト[[正教会]]、アルメニア[[使徒教会]]、エチオピア[[正教会]]などとはフル・コミュニオンの関係にあります。また、東方正教会やカトリック教会ともエキュメニズムに基づいた対話を進めています。

典礼言語には、イエス・キリストや使徒たちが日常的に使っていたと言われる古代アラム語の一種である古典シリア語を用いています。

アンティオキア総主教を巡る複雑な状況

アンティオキアには、シリア正教会以外にも、シリア典礼カトリック教会、メルキト・ギリシャ典礼カトリック教会、マロン典礼カトリック教会もアンティオキア総大司教を名乗っており、複雑な状況となっています。これは、キリスト教の歴史の中で、様々な宗派が分裂と再編を繰り返してきた結果です。

まとめ

シリア正教会は、その歴史、教義、そして独自の伝統を持つ重要なキリスト教教派です。非カルケドン派正教会として、東方正教会とは異なる道を歩んできましたが、現代では他の教派との対話を通して、相互理解を深める努力を続けています。

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