厚木海軍航空隊

厚木海軍航空隊（第二〇三海軍航空隊）

厚木海軍航空隊は、太平洋戦争の戦局悪化に伴い、戦闘機搭乗員の補充・養成を目的として1943年4月1日に神奈川県の厚木基地で開隊しました。当初は第十一航空艦隊に所属し、艦上戦闘機48機と夜間戦闘機12機を保有していました。築城海軍航空隊が母艦搭乗員の養成を担う一方、厚木空は基地航空隊員の育成を担当しました。

1943年7月1日には第十二航空艦隊の新編に伴い、第五十一航空戦隊に編入されました。同年10月にはマーシャル諸島防空警戒のため木更津飛行場へ進出しましたが、これは留守部隊としての役割でした。

第二〇三海軍航空隊への改称と転戦

1944年2月20日、部隊は「第二〇三海軍航空隊」に改称され、実施部隊としての性格を強めました。夜間戦闘機隊は廃止され、艦上戦闘機の定数は36機に削減されました。厚木基地を第三〇二海軍航空隊（通称：厚木航空隊）に譲り渡した後、二〇三空は各地を転戦するようになりました。

同年3月29日には千歳飛行場に進出し、北海道・千島列島の防空・哨戒任務に従事しました。5月21日には「東号作戦」発動に伴い、20機が関東各地に派遣されましたが、後に原隊復帰しています。7月10日の組織改編では、戦闘第303飛行隊と戦闘第304飛行隊が編成され、月光の運用も再開されました。8月3日には第五十一航空戦隊で「N方面空襲部隊」が結成され、占守島と美幌飛行場に進出し、各16機体制で展開しました。

捷号作戦とフィリピン戦線

1944年9月1日、「捷号作戦」準備のため百里飛行場に進出しました。9月14日には戦闘第303飛行隊がT攻撃部隊に供出され、「N方面空襲部隊」は自然消滅しました。10月13日には全機が出水飛行場に進出し、10月23日には航空総攻撃に備え、ルソン島バンバン飛行場へ進出しました。この際、零戦16機と月光24機を保有していました。10月24日の航空総攻撃では戦果を挙げることはできませんでした。10月27日にはマリンダック島上空で空中戦を行い、10月29日にはクラーク飛行場防空戦に参加しました。11月2日には第二次多号作戦の上空護衛を行い、以後、撤退までにフィリピン各地に出撃を繰り返しました。この間、16名の搭乗員が神風特攻隊員として戦死しました。

沖縄戦と特攻

1944年11月15日、第三航空艦隊第二十五航空戦隊に転籍し、鹿児島県笠之原飛行場に撤退しました。戦闘第304飛行隊は第二二一海軍航空隊に移籍しました。その後、菊水作戦発動まで、笠之原で再編に従事しました。1945年2月11日には第五航空艦隊直率となり、沖縄戦の防空隊となりました。戦闘第303飛行隊が復帰し、3月21日には第七二一海軍航空隊神雷隊の初出撃を護衛しましたが、神雷隊は全機が撃墜されました。3月26日には南九州にB-29が襲来し、笠之原防空のため全機が出撃しましたが、戦果・被害ともにありませんでした。3月29日には敵艦載機部隊が南九州を強襲し、笠之原防空のため再び全機が出撃しました。4月1日には沖縄の地上戦が開始され、奄美大島上空に進出し、制空任務に従事しました。4月8日には「菊水二号作戦」が発動され、徳之島上空に進出し、制空任務を継続しました。4月15日には第六〇一海軍航空隊と合同で、計10機で沖縄中飛行場を強襲しました。4月16日には敵艦載機部隊が笠之原を強襲し、全力で迎撃しました。4月23日には三〇二空、第三三二海軍航空隊、第三五二海軍航空隊の雷電隊で「竜巻部隊」が結成され、笠之原飛行場は竜巻部隊が優先的に使用することになり、二〇三空の行動は制限されました。

1945年5月頃、二〇三空はB-29編隊に自爆特攻を行う「天雷特別攻撃隊」の訓練を岩国基地で開始しました。同年5月25日には、吉富司令から訓示があり、白虎隊、飛龍隊が編成されました。訓練は岩本徹三、田中民穂が教官として指導しました。8月には2度出撃しましたが、未帰還機が出たものの、特攻する機会はありませんでした。5月25日には第五航空艦隊再編に伴い第七十二航空戦隊に転籍し、7月21日には築城飛行場に撤退しました。1945年8月15日、終戦を迎えました。

主力機種と歴代司令

主力機種は零式艦上戦闘機と月光でした。

歴代司令は以下の通りです。

山中龍太郎（昭和18年4月1日 - ）
吉富茂馬（昭和20年5月5日 - 戦後解隊）

参考資料

『日本海軍編制事典』（芙蓉書房出版　2003年）
『航空隊戦史』（新人物往来社　2001年）
『日本海軍航空史2』（時事通信社　1969年）
『戦史叢書　海軍航空概史』（朝雲新聞社　1976年）
『戦史叢書　沖縄方面海軍作戦』（朝雲新聞社　1968年）
『戦史叢書　海軍捷号作戦（2）』（朝雲新聞社　1972年）
『戦史叢書　本土方面海軍作戦』（朝雲新聞社　1975年）
『連合艦隊海空戦戦闘詳報別巻1』（アテネ書房　1996年）
角田和夫『修羅の翼』（光人社 2002年）ISBN 978-4769810414。
文庫本（光人社NF文庫 2008年）ISBN 978-4769825852

関連項目

大日本帝国海軍航空隊一覧
厚木海軍飛行場

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