厚田郡

厚田郡：北海道の歴史を刻んだ消滅郡の軌跡

北海道石狩地方に存在した厚田郡は、その歴史の過程において、幾多の変遷を遂げ、最終的に石狩市に編入される形で消滅しました。本稿では、江戸時代から昭和時代後期までの厚田郡の歴史を詳細に辿り、その変遷を多角的に考察します。

江戸時代：松前藩と天領の狭間

江戸時代、厚田郡域は西蝦夷地に属し、松前藩の支配下にありました。「アツタ場所」と呼ばれる拠点が開設され、藩政の重要な一翼を担っていました。しかし、国防上の必要性から、文化4年には天領とされ、幕府直轄地となりました。その後、文政4年には再び松前藩領に戻りますが、安政2年には再び天領（庄内藩警固地）となり、箱館奉行所が設置されました。この時代、石狩役所の荒井金助による望来周辺の油田発見や、厚龍寺の建立、そして濃昼山道の開削など、厚田郡域では様々な出来事が起こり、地域の社会基盤が形成されていきました。戊辰戦争（箱館戦争）終結後の1869年、大宝律令の国郡里制を踏襲する形で、厚田郡が正式に設置されました。

明治時代：開拓使から郡制施行へ

明治2年、北海道において国郡里制が施行され、石狩国および厚田郡が設置されました。開拓使による統治が始まり、戸長・副戸長設置、大区小区制の施行など、新たな行政制度が導入されました。明治9年には、それまでの大小区画を廃止し、全道30の大区と166の小区へと再編されました。明治12年には郡区町村編制法が北海道で施行され、行政区画としての厚田郡が正式に発足しました。その後、札幌県、北海道庁の管轄下に置かれ、所属する支庁や郡役所も幾度となく変更されました。明治30年の郡役所廃止後は、札幌支庁、その後石狩支庁の管轄となりました。

明治以降：町村制施行と市町村合併

明治35年、北海道二級町村制の施行により、厚田村と望来村が成立しました。その後、明治40年には両村が合併し、厚田村（一級村）となりました。大正11年には札幌支庁が石狩支庁に改称され、昭和18年には北海道一・二級町村制が廃止され、北海道で町村制が施行されました。昭和22年には地方自治法の施行により、石狩支庁の管轄となりました。そして、平成17年10月1日、厚田村は石狩市に編入され、厚田郡は歴史の幕を閉じました。

厚田郡の遺産

厚田郡は、江戸時代の松前藩支配から、明治時代の開拓使による近代化、そして昭和、平成時代における地方自治への移行まで、北海道の歴史の重要な一部を担ってきました。その歴史は、現在も石狩市の厚田地区に残る歴史的建造物や地域文化などに息づいています。厚田郡の消滅は、一つの時代の終わりを告げると同時に、新たな時代の始まりを示すものでもありました。その歴史を深く理解することは、現代の北海道社会を理解する上で不可欠です。

参考文献

角川日本地名大辞典 1 北海道
Miyake, Riichi, Takeo Ozawa, and Satoru Kaku. Atsuta - Re-vision of Hokkaido. Flick Studio, 2013. ISBN 978-4904894125

関連項目

消滅した郡の一覧
松前藩
箱館奉行
商場（場所）知行制
場所請負制
石狩市

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